特 集
2000/4/17
核拡散防止条約(NPT)再検討会議
4月24日、NYで開幕
核なき次世紀 どう展望
軍縮努力の評価焦点

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が二十四日、米ニューヨークの国連本部で開幕する。核軍縮に向けた国際社会の熱意を計る「リトマス試験」とも言われる、五年に一度の会議。新千年紀の節目に、ロシアの第二次戦略兵器削減条約(START2)批准を追い風としながら、核開発の歴史を総括し、核のない二十一世紀を展望できるかどうかが最大の焦点となる。

(江種則貴)


20世紀末の核と非核地帯
※数字は作戦配備の核弾頭数(1998年)
(米国・天然資源保護協会、カーネギー国際平和財団などのデータによる。数字を丸めているので合計が合わない場合もある)


 日本の新提案 採択なるか

体制揺らぐ

 一九七〇年に発効したNPTは微妙なバランスのうえに成り立つ。核兵器国を米国、ロシア、イギリス、フランス、中国に限定し、その他の国には核の保有も開発も禁じる一方、NPT第六条はこの五カ国に核軍縮への誠実な努力を求める。「大国の核保有を固定化する」という批判の一方、「五大国に核軍縮を迫る唯一の条約」でもある。

 不平等との批判を考慮し、NPTは異例の二十五年間の期限付きでスタート。期限となった九五年の前回再検討会議で「無期限延長」を決定した。当初六十二カ国が署名した条約加盟国は、現在百八十七カ国。新たな核兵器国はごめんだとの国際社会の意思を表している。

 ところが九八年、未加盟のインドとパキスタンが核実験を行い、核保有を宣言した。同じく未加盟のイスラエルは、それ以前から核保有が確実視されている。NPT体制に挑戦する暴挙だが、国際社会はいまだ解決策を見いだせずにいる。

5年を総括

 こうした経過を経て開かれる今回の会議。ロシアのSTART2批准を除けば、停滞している最近の核軍縮状況を踏まえ、第六条の進ちょく状況の評価が、まず焦点となりそうだ。

 前回会議では、無期限延長とセットで「核不拡散と核軍縮の原則と目標」が採択された。(1)包括的核実験禁止条約(CTBT)の締結 (2)兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の即時交渉開始 (3)体系的で前進的な核軍縮努力 (4)非核地帯の設置 (5)非核兵器国の安全保障―などが柱。六条を具体化する行動目標であり、これらを軸に五年間の進展ぶりが論議される。

 ブラジル、エジプトなど核兵器廃絶を求める「新アジェンダ連合」諸国がどういう論争を核保有国に挑むか。国際司法裁判所が示した「核兵器の使用は一般的に違法」との勧告をどう生かすのか。印パにどう対処するか―。会議は、ここ五年間の非核を求める動きの真価も問いかける。

廃絶を訴え

 日本政府はCTBTの批准促進など、五年前の「原則と目標」を補足する新たな包括的核軍縮目標を提起する。「核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラム」が提言した報告書が全体論議にどこまで反映されるか。米国の「核の傘」に依存しながら究極的核廃絶を説く被爆国の主張も、会議の行方を左右しそうだ。

 会期は五月十九日までの四週間。加盟国が演説し、五月三日は長崎市の伊藤一長市長をはじめ非政府組織(NGO)が核兵器廃絶をアピールする。その後、三委員会に分かれ討議する。



 
≪ICJ勧告≫
 国際司法裁判所(ICJ)は96年7月、「核兵器の使用・威嚇は人道法に一般に違反する」との勧告的意見を出した。このなかで、NPT第6条の解釈として「あらゆる側面における核軍縮を達成する義務である」との見解を示し、単なる軍縮努力だけでなく、その成果の実現を核保有国を含む国際社会に求めた。

≪新アジェンダ連合≫
 98年6月、アイルランド、スウェーデン、南アフリカ、ブラジル、エジプト、メキシコ、ニュージーランド、スロベニア(後に脱退)の8カ国が共同宣言「核兵器のない世界へ」を発表。核保有国に廃絶への明確な誓約を求めた。国連総会に同様の決議を提出、採択されるなど、廃絶を求める国際社会の「旗手」的役割を果たしている。

≪東京フォーラム≫
 印パ核実験を受け、日本政府の提唱でスタート。99年7月にまとめた報告書は、米ロの核弾頭の各1000発までの削減など17項目の提言を盛り込んだ。その第1項は「NPT体制の弱体化を阻止し修復せよ」とし、体制強化のための協議委員会や常設事務局の創設を求めている。
 

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