劣化ウラン弾 禁止機運、欧州で高まる

'01/1/6

 劣化ウラン弾で破壊されたソ連製の戦車に上がって遊ぶ近所の少年。近くには住宅が立て込んでいる。(コソボ・ジャコバ市)

 ■NGO積極的に活動

 「放射能兵器」である劣化ウラン弾使用への批判がイタリア、ス ペインなど欧州各地で急速に高まっている。背景には、ボスニア・ ヘルツェゴビナ、ユーゴスラビア・コソボ自治州に国際平和維持軍 として派遣された帰還兵に、白血病などで死亡するケースが目立っ ているからだ。

(田城 明)

 一九九九年のコソボ紛争では、北大西洋条約機構(NATO)軍 の主力である米空軍が、コソボ地区に三〇ミリ砲弾、約三万一千個の 劣化ウラン弾を使用したことを認めている。特にイタリア軍が駐留 するコソボ南西部などで、ユーゴスラビア軍戦車などを標的に集中 的に投下された。

 人体への影響は、既に九一年の湾岸戦争で米・英両軍がイラク軍 戦車に対して使用、戦場となったイラク南部の子どもたちやイラク 軍退役兵らに白血病、その他のがんが多発していることで知られて いる。米・英・カナダなど多国籍軍の退役兵にも、深刻な健康障害 をもたらし、多くの死者が出ている。

 最大の劣化ウラン弾輸出国である米国の国防総省は、人体への影 響をかたくなに否定し「将来も使用する」としている。

 しかし欧州では、フィンランドの環境大臣が昨年五月、欧州連合 (EU)内の各国環境相あてにいち早く使用禁止を呼びかけた。十 一月には英国やスペインで、非政府組織(NGO)による劣化ウラ ン弾の人体・環境への影響に関する国際会議が相次いで開かれ、製 造・使用禁止を求める機運は欧州全域で高まっている。

 今後、劣化ウラン弾の使用をほとんど知らされていないコソボ自 治州に住むアルバニア系住民、同地域で支援活動を続ける各国NG Oの人たちの健康問題もクローズアップされるだろう。

 《劣化ウラン弾》核兵器や原発用の濃縮ウラン製造過程で生まれ る大量の劣化ウラン(U238)は、鉛より約一・七倍比重が重 く、摩擦熱による発火力も高い。この物質を弾しんに利用し、主と して対戦車砲として開発された放射能兵器。発火の際に放射能を含 んだ微粒子が大気中に飛散。劣化ウランの持つ強い毒性と併せ、人 体に悪影響を与え、環境汚染を引き起こす。

 【写真説明】劣化ウラン弾で破壊されたソ連製の戦車に上がって遊ぶ近所の少年。近くには住宅が立て込んでいる。(コソボ・ジャコバ市)


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