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被爆75年 広島の今を映す HIPPYさんらが動画 景色・証言・歌 8言語で発信

 8月6日の原爆の日にちなみ、毎月6日に被爆証言会を開いてきた広島市安佐南区出身のシンガー・ソングライターHIPPYさん(40)と広島市立大4年達富航平さん(22)=西区=が、被爆75年を節目にした映像作品を完成させた。日々生きることへの感謝をつづった歌に、被爆者の岡田恵美子さん(83)=東区=の証言を織り交ぜた。「75年間は草木も生えぬ」と言われながら復興した広島の今を伝えようと、動画投稿サイトで8言語で発信している。

 作品は約8分30秒。HIPPYさんの歌「日々のハーモニー」をBGMに、岡田さんと孫の女性がビルの屋上から広島都心を見渡す場面から始まる。行方不明のままという県立広島第一高等女学校(現皆実高)1年だった当時12歳の姉に「玄関を開けて待っているよ、と今でも言いたい」と話す岡田さんの表情から、今なお家族の帰りを待つ切ない心情が浮かぶ。

 HIPPYさんは中区の繁華街で被爆証言会を開いてきた有志グループの一員。発足人の冨恵洋次郎さんが2017年に肺がんのため37歳で亡くなった後に会を引き継いだが、今年3月からは新型コロナウイルス感染拡大を受け、インターネット開催に切り替えていた。

 多くの人が被爆者の声に直接耳を傾けられない75年目の夏を迎え、一変した広島の景色と証言を記録したいと思うように。企業や音楽バンドの映像作品を手掛ける大学生の達富さんと出会い、構成を練った。達富さんは「編集作業で岡田さんの表情と証言を何度もたどった。つい75年前のことで、まだ終わっていない。そんな思いに胸が締め付けられた」と振り返る。

 作品後半には、松井一実市長と元広島東洋カープの新井貴浩さん(43)も登場。作品の感想や広島への思いを語る。「過去は変えられないけど未来は変えられる。歌と映像、それぞれが得意な分野で発信してくれたことがうれしい」と岡田さん。HIPPYさんは「75年で街並みは一変したが、変わらない思いもある。それを若い世代で共有していきたい」と話す。

 日本語のほか、英語と韓国語、中国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語の字幕付き。動画投稿サイト「ユーチューブ」の公式チャンネル「ひぴ動HIPPY」で配信している。(加納亜弥)

(2020年8月19日朝刊掲載)

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