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75年前と今重ね 心つなぐ手紙 福山工業工2年生65人 「学ぼうヒロシマ」掲載の証言に感想

使命感伝わり 被爆者励み

 福山工業高(福山市)の2年生65人が、中国新聞の中高生向け平和学習新聞「学ぼうヒロシマ」に掲載された被爆者9人の証言を読み、手紙を書いた。若い世代が75年前の記憶を受け止めながらしたためた文面を受け取り、被爆者は励まされている。(湯浅梨奈、新山京子)

 「学ぼうヒロシマ」は今年6月に発行。本紙掲載された体験証言記事「記憶を受け継ぐ」を再掲している。同校は現代社会の授業の中で活用。生徒それぞれが心に残った証言を選び、思いをつづった。

 高橋歓多(かんた)さん(16)は、爆心地から1・3キロで被爆した川崎宏明さん(82)=広島市西区=に手紙を書いた。50代で心筋梗塞を患い、被爆者として病気に苦しんできたと知り、「自分なら生きる希望を失っていたはず」。どんな気持ちで人生を歩んできたか「直接会って話が聞きたい」と願う。

 松岡奎汰(けいた)さん(16)は、被爆後に爆心地を歩いた益田アイさん(91)=広島市安佐南区=に宛てた。立ったまま被爆死していた女学生の話に衝撃を受け、「思わず文から目をそらしたくなった」。被爆者が心身に深い傷を負っても伝えようとする思いを受け止め、「これが現実なんだとあらためて感じた。学んで継承したい」と強調した。

 山下雄大さん(17)は、母と姉、妹を原爆に奪われた武永舜子さん(90)=広島市中区=に向け、したためた。「悲しみに押しつぶされそう」と、自分の家族が原爆に焼かれて苦しみ亡くなることを想像した。

 松井永成(ひさなり)さん(17)と村上陽太さん(16)は、市街地で遺体の片付けをした坂田尚也さん(90)=三次市=に宛てた。松井さんは「市民の命があまりにも軽んじられていた。感じたことを直接伝えたい」、村上さんは「想像できないほど残酷な世界があった。記憶を受け継ぐため、史実の勉強に励みたい」と言う。

 担当の祝迫直子教諭は「多くの生徒が積極的に書きたいと言った。若い世代は被爆者と接点を持ちたいと思っている」と話す。

 手紙を受け取った被爆者たちは高校生との交流を喜んだ。体験証言は初めてだったという益田さんは「身体を気遣ってくれる高校生たちの優しさに感謝したい。戦時中、私たちは勉強する機会がなかった。自分の進むべき道を信じて勉学に励んでほしい」とほほ笑んだ。

 入市被爆した新井俊一郎さん(88)=南区=は、病と闘いながら証言活動を続けている。核兵器廃絶のために行動するという生徒たちの声がつづられた文面を読み、「生き残った人たちの『伝える』という使命感を分かってもらえた」と感じたという。「多くの核兵器が存在している世界の現状に目を向けて、若者としてできることに取り組んで」とエールを送った。

(2020年11月16日朝刊掲載)

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