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霞キャンパス案 追加発表 放影研移転先 来年6月にも選定

 日米両政府の共同出資で運営する放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は3日、現在地の比治山公園からの移転候補地に、広島大霞(かすみ)キャンパス(同区)を加えたと正式に発表した。これまで市総合健康センター(中区)が候補地に挙がっていたが、広島大との連携強化で共同研究を進めやすいなどの利点に着目。今後、二つの候補地を比較検討し、来年6月の評議員会で移転先を最終決定したい考えだ。

 放影研の研究や運営について意見を聞く非公開の地元連絡協議会で、霞キャンパス案の追加を明らかにした。

 協議会の終了後、記者会見した丹羽太貫理事長によると、霞キャンパス案は今年1月に開かれた非公式の評議員会をきっかけに浮上。放射線の健康影響について従来の疫学調査だけでなく、技術の進歩に応じた分子レベルの解析をする研究が求められているとの声を受け、地元の研究機関との連携に力点を置く中で候補に挙がった。

 霞キャンパスは、放影研の東南約600メートルと距離が近く、放射線医科学分野の大学所属の研究所として国内最大規模の原爆放射線医科学研究所(原医研)や広島大病院などがある。

 移転先を巡っては、市が2016年に示した市総合健康センターへの移転は、専門業者の調査で技術的に「可能」とされている。丹羽理事長は霞キャンパス案が浮上した背景について「研究をスムーズに進めるため、移転で何ができるかを前向きに考える中で出てきた」と述べた。

 会見には、広島大の越智光夫学長が同席し「共同研究の強力な相手になる」と大学側のメリットも強調した。霞キャンパス案は施設新築が視野にあり、建設費用の試算も進める。放影研は来年の評議員会で候補地を決め、日米両政府に予算措置を求めたい考えだ。

 放影研は敷地面積約2万2700平方メートル。市は、前身の米国の原爆傷害調査委員会(ABCC)が1950年に現在地に移った経緯について「占領下で強行された」と訴え、移転を前提に比治山公園一帯を「平和の丘」として再整備する構想を掲げている。(水川恭輔)

(2020年12月4日朝刊掲載)

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