×

ニュース

戦争の記憶 映画で継承 コロナ乗り越え上映会 広島出身の御手洗さん主催

 原爆や戦争を題材にした作品を上映する映画祭を東京都内で開いてきたテレビ番組制作会社ディレクターの御手洗志帆さん(32)=東京都、広島市西区出身=が一般社団法人「昭和文化アーカイブス」を設立し、戦争体験の継承と映画文化を守る取り組みに力を入れている。コロナ禍で迎えた戦後75年。感染防止に注意を払いながら8月と今月、上映会を実現させた。

 御手洗さんは2012年から毎夏、広島市佐伯区出身の映画監督で同年亡くなった新藤兼人さんの作品をたどる「平和映画祭」を主催してきた。原爆だけでなく東京大空襲や沖縄戦など幅広いテーマを扱おうと、映画祭の衣替えや活動の法人化を図る最中、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた。

 「続けるべきか悩んだが1年ごとに証言者が老い、減りゆくことに焦りがあった」。国の緊急事態宣言解除後に準備を再開し、6月に昭和文化アーカイブスの設立にこぎつけた。

 8月に「戦争の記憶と記録を語り継ぐ映画祭」を都内2会場で開き、3日間の日程で新藤監督の「一枚のハガキ」(11年)など7作品を上映した。呉市出身のサックス奏者坂田明さんや幼少時に旧満州(中国東北部)から引き揚げた俳優宝田明さんらがトークに参加し戦争の記憶をたどった。

 旧日本軍による米ハワイ・真珠湾攻撃から79年を迎えた今月7日には、都内のミニシアターでハワイの日系2世の退役軍人を追ったドキュメンタリー映画「Go for Broke!」(12年)の上映会を開催した。

 来年の映画祭は被爆ピアノにちなんだ内容を検討している。御手洗さんは「映画は見る人によって自由な感じ方がある。若い世代に先の戦争への関心を高めてもらう企画を考えたい」と見据える。(桑原正敏)

(2020年12月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ