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社説・コラム

『書評』 平和創造学への道案内 平和創る理念や具体例 論考集刊行

「平和」とは何か。いかにして創ることができるのか。理念や具体例をまとめた論考集「平和創造学への道案内」=写真=が、法律文化社(京都市)から刊行された。明治大の山田朗教授と師井勇一客員講師が編者を務め、同大教員や同大で学んだ研究者たち17人が執筆を担当した。

 平和とは、単に祈ったり受容したりするものではなく、一人一人の市民が「人権」を基盤として積極的に創り出すもの―。「平和創造学」という耳慣れない言葉には、そんな思いが込められているという。

 3部構成で、Ⅰ部は「平和を創造する文脈」と題し、日本国憲法の現代的意義などを考察。Ⅱ部は「取り組み」とし、直接的な暴力だけでなく、平和を阻む、差別や抑圧といった構造的暴力の問題を考える。

 Ⅲ部は「平和を創造するための〈場〉」を取り上げる。旧陸軍の負の歴史を伝える同大平和教育登戸研究所資料館(川崎市)など4館を紹介。広島市の原爆資料館について、同館の小山亮学芸員が案内している。

 同大卒の村山富市元首相も推薦文を寄せる。「植民地支配と侵略への反省とおわび」を明記した1995年の「村山談話」について「根本には、私なりの平和創造への決意があった」とつづっている。A5判、220ページ。2750円。(森田裕美)

(2021年8月2日朝刊掲載)

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