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「容認ありき」に批判も 島根原発安全審査 30キロ圏2県6市

 中国電力が島根原子力発電所2号機(松江市鹿島町)の再稼働を前提に申請する安全審査について、原発30キロ圏の島根、鳥取県と両県6市の「容認」が20日、出そろった。2県6市は全国でも異例の事前了解手続きに沿い中電から説明を受けたが「結論が透けて見えた」との批判もあった。今後、稼働の是非を判断する際に住民の声をどう反映するか。課題が残った。(樋口浩二)

 14日、安来市が開いた安全審査の住民説明会。「安全審査は車でいう車検のようなもの」。市の松本城太郎危機管理監は中電の説明に先立ち、審査の必要性をこう表現した。

 説明後、参加者からは早期稼働を目指す中電に批判が相次いだが、市は質問を4人で打ち切った。「予定時間を超えたため」と松本管理監。しかし、同市の農業野島実子さん(62)は「事故の不安があり参加したが、はなから住民の声を参考にするつもりはなかったのでは」と憤った。

 2県6市はいずれも、中電が島根県と松江市に事前了解を求めた当初から申請自体は容認する姿勢だった。「安全性のチェックを止める理由がない」(出雲市の長岡秀人市長)との理由だ。その証拠に、2県6市とも議会には申請の容認をまず執行部が提案。議会が追認する格好で最終的な容認を決めた。

 今回の事前了解の流れは原発稼働に対する住民の不安などに配慮した県と市、中電の3者によって6月に決まった。30キロ圏全自治体への説明を求めたのは全国の原発立地県で初めてだ。近く安全審査を申請する東北電力女川原発2号機の地元、宮城県のように「規制委の審査を見極めたい」と了解手続きを先送りする県が大半だ。

 一見、丁寧に見えた地元説明の手続き。だが島根県は7月、事前了解を求める考えと同時に申請のみを認める素案も示したため「容認は当然」との雰囲気が周辺自治体に広がった面もあった。19日の雲南市議会では、鳥取県、出雲、雲南、安来、米子、境港市の1県5市より先に島根県が容認を決めたことへの批判も出た。再稼働の判断に向けた議論のヤマは規制委の審査後の地元説明となる見込みだが「このやり方では周辺が納得しない」(島根県議)との声もある。

 島根県の溝口善兵衛知事は13日、地元合意を形成する仕組みを「国が示していない」と述べ、あくまで国の方針を待つ考えを示した。原発30キロ圏の意見を尊重する姿勢を貫く以上、その方策を検討する覚悟が求められる。

(2013年12月22日朝刊掲載)

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