×

ニュース

指定地域を科学的検証 「黒い雨」 国の検討会が初会合

■記者 岡田浩平

 原爆投下後に降った「黒い雨」の指定地域の問題で、厚生労働省が設けた有識者の検討会(8人)の初会合が28日省内であった。国の指定地域より広い範囲で住民の健康不良があるとする広島市などの調査、研究を基に、国の援護対象となる地域を広げるかどうか科学的な検証を進める。

 座長に日本アイソトープ協会の佐々木康人常務理事、座長代理に広島赤十字・原爆病院の土肥博雄院長を選出。市などが5月に公表した黒い雨体験者らの一昨年の健康意識調査と、科学者の研究会による報告書を取り上げた。

 調査をした東京都精神医学総合研究所の飛鳥井望氏が参考人で出席。黒い雨を浴びた未指定の地域の住民が全般に「放射線による健康不安」などの要因で心身の健康面で不良だとする結果を説明した。

 一方、研究会メンバーで検討会委員でもある放射線医学総合研究所の米原英典氏は、指定地域外の民家の床下から検出され、黒い雨の科学的根拠になるとみられていた放射性物質セシウム137について報告。他の物質との関係から「広島原爆由来であるとは断定できない」と現時点での見解を説明した。

 国は1945年の調査に基づき、黒い雨の「大雨地域」を76年に健康診断特例区域へ指定。住民らの健康診断を無料で実施し、特定の病気になれば被爆者健康手帳を交付している。(岡田浩平)


地域拡大へ期待と不安 指定外住民ら

 厚生労働省の検討会で、原爆投下による黒い雨の指定地域を広げるかどうかの検証が28日始まった。同省での初会合には広島市の指定地域外の住民らも傍聴に訪れ、速やかな地域拡大へ期待と不安を胸に議論を見守った。

 議論の冒頭、国は30年前の「原爆被爆者対策基本問題懇談会」意見書を引き「被爆地域の拡大は科学的、合理的な根拠のある場合に限定して行うべき」と説明した。委員は全て科学者。拡大を求める根拠である広島市などの調査報告についても早速、疫学などの観点で質疑があった。

 終了後、佐々木康人座長は「科学的、客観的に的確に判断したい」と語った。

 一方、関係者が高齢化し速やかな結論を求める声は強い。参考人の志賀賢治・広島市健康福祉局長は「黒い雨が降った地域でも何ら援護を受けられない人がいる。明らかになった事実を踏まえ地域を広げてほしい」と求めた。広島県「黒い雨」原爆被害者の会連絡協議会の高野正明会長(72)は「住民の証言こそが真実。市の調査に基づき一刻も早い結論を」と訴えた。

(2010年12月29日朝刊掲載)

年別アーカイブ