北朝鮮情勢と核開発問題の行方は 広島市立大平和研・金教授に聞く
11年12月26日
日本政府 積極「関与」を 核実験 当面控える可能性
北朝鮮の金正日総書記急死を受け、三男の金正恩氏による後継体制と核開発問題はどうなるのか。朝鮮半島問題が専門の広島市立大広島平和研究所の金聖哲教授に見通しを聞いた。(金崎由美)
―北朝鮮情勢の今後をどう予測しますか。
短期的に国内で大きな混乱はないだろう。正恩氏をトップとする実質的な集団指導体制で権力基盤を固める。最大の援助国である中国も隣国の混乱は極力避ける方向で動く。
対外政策の基本路線もそう変わらない。周辺国の態度に応じ強硬姿勢にも多少の柔軟路線にも転じうる。いずれにしても権力基盤が固まるまで重要課題の決定は避けるだろう。
―核開発問題の解決に向けた進展は望めますか。
6カ国協議の早期再開は望めないだろう。北朝鮮が交渉材料としての核カードを簡単に放棄するとは考えにくく、依然として難問だ。一方、拉致問題だけを進展させることは困難で、日朝国交正常化や核開発問題での前進を図りながら打開を探らざるを得ない現実は変わらない。
金総書記は金日成主席が死去して3カ月後の1994年10月、核開発の凍結に関する「米朝枠組み合意」を結んだ。だが、正恩氏が核問題にどれだけ関心を持っているかは未知数だ。国際的な反発を招き中国の面目をつぶす核実験については当面控える可能性がある。
―日本政府の取るべき対応は。
当然だが、北朝鮮との接触を試みる米国、影響力を強める中国、朝鮮半島の非核化が自国の重要課題である韓国と連携を強めていくことだ。
日本単独で積極的にアプローチする努力もするべきだ。日本が北朝鮮への関与を強めても(安全保障上の懸念から)中国がけん制したりはしないはずで、対中政策の延長線上で対北政策を捉えるべきではない。高圧的な「制裁」としてではなく「関与」としての働きかけが必要だ。
経済制裁は皮肉にも中国に対する北朝鮮の依存度を高めさせるばかりで、効果も限定的。日本の存在感を示せる選択肢を戦略的に考えてほしい。
キム・スンチュル
1956年、韓国光州市生まれ。米カリフォルニア大アーバイン校で博士号(政治学)取得。韓国統一研究院(KINU)主任研究委員などを経て07年から現職。
(2011年12月24日朝刊掲載)