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愛宕山売却 国に伝達 山口知事と岩国市長 年度内に契約締結

 山口県住宅供給公社所有の愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)の国への売却で、二井関成知事と福田良彦市長が26日、防衛省で一川保夫防衛相と会い、跡地の売買に合意した。本年度内に契約を交わし、国は米軍住宅や運動施設の建設を進める。

 県市は売却の前提として在日米軍再編について「米軍普天間飛行場(沖縄県)移設の見通しが立たない間は米海兵隊岩国基地への空母艦載機移駐を認めない」とする基本方針の尊重などを防衛相に要請。この日午前、「艦載機移駐のみを進める考えはなく、全力で取り組む」という趣旨の地方協力局長名の回答文書を受け取った。

 会談では防衛相が「回答文書の内容は十分理解しており、誠心誠意対応したい」と表明。知事は回答を評価し「基本スタンスを守ってもらうのを前提に売却する」と伝えた。

 会談後、知事は跡地売却と艦載機移駐を切り離す考えに国の理解を得られたと強調。2014年に計画される移駐について「基本方針を国が守れなければ強く反対していかなければならないので、責任ある対応をしてほしい」と述べた。

 売却額は168億9千万円。国は12年度から設計、13年度の本格着工を目指す。(岡田浩平)


艦載機移駐計画が前進 愛宕山売却 国に伝達

 愛宕山地域開発事業跡地(岩国市)を売却する山口県と岩国市の方針が26日、跡地に米軍住宅の建設を目指す国に正式に伝えられ、米海兵隊岩国基地への艦載機移駐計画は大きく前進した。県、市も赤字を抱える跡地問題の解決を強調。ただ、県、市とも現時点で移転を容認してない「矛盾」をはらみ、2014年の移駐の目標年へ火種もくすぶる。

 二井関成知事、福田良彦市長と防衛省で面談した一川保夫防衛相。米軍普天間飛行場(沖縄県)移設の見通しが立たない間は、岩国への先行移駐を認めない県市の基本方針について「誠心誠意、対応したい」と述べた。国の文書回答は県や市の意向を重視する内容で、国の岩国移駐を着実に進めたい思いがにじんだ。

 だが、12年度予算案に国は鹿児島県の反発が強い馬毛島での艦載機の陸上空母離着陸訓練の調査費を計上。一川防衛相は「地元の了解なしに執行しない」とするが、強引ともいえる手法に国と鹿児島県の溝は深まった。

 同様の事例が岩国で起きないという保証はない。むしろ岩国は、基地内に艦載機の受け入れ施設の工事が着々と進み、さらに愛宕山跡地への米軍住宅建設も既成事実として積み上がり、反対しにくい状況にあるといえる。

 二井知事は住宅が完成しても基本方針に沿わない場合、入居を認めない「強硬姿勢」を一応は打ち出した。一方で移駐の鍵となる愛宕山跡地は事業の赤字解消のための「現実的な対応」として売却に傾いた。今後、岩国先行の「是正」が効かない場合、政治判断のあいまいさが問われることは必至だ。(金刺大五)

(2011年12月27日朝刊掲載)

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