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米軍機飛行訓練 米側「政府間で合意」 「超低空で恐怖」憤る地元

認識の溝 深さ浮き彫り

 米軍機2機が20日に三次市北部を低空飛行した問題で、在日米軍はこの空域での同日の飛行は認めたものの、訓練は「日米政府間の合意に従って行われた」と主張した。一方、地元は「児童に恐怖をも与える超低空飛行。事実とかけ離れた回答だ」と憤る。認識の溝の深さがあらためて浮き彫りになっている。(桜井邦彦)

 「パイロットが見えるほどの『超低空』飛行と聞いた。作木小の真上も飛んでおり遺憾だ」。三次市の増田和俊市長は米軍の回答に不快感を示した。

異常さ裏付け

 今回の飛行は市や県に寄せられた目撃情報6件のうち5件が、県の高度別の4分類で最も低い「超低空」。見た人の感覚による分類とはいえ、2011年度上半期(4~9月)の県内の目撃情報延べ675件中、「超低空」は1件で、その異常さを裏付ける。

 市地域振興課によると、昨年度、市に寄せられた目撃件数は45件。市町村合併した04年の148件より少ない。だが、諦め感などから通報しない住民も多いとみられ、実数が減っているとは言い切れない。

 22日付で在日米大使館や米海兵隊岩国基地などに訓練中止を求める文書を送った増田市長は「行政の監視機能を強め、訓練中止を国や米側に粘り強く要請する」と強調する。

 作木町の複数の住民によると、同町では近年も山あいを縫ったり、低空から急上昇したりする飛行が見られるという。「山を歩いていて、自分より低い地点を飛んだ」という証言もある。

 30年前には同町で米軍機の墜落事故があった。町自治連合会の田村真司会長(61)は「飛行は日常茶飯事で減っていない。岩国基地への艦載機移転の話もあり、今後どうなるのか恐ろしい」と言う。

 日米合同委員会の合意では、学校や病院上空の飛行について「妥当な考慮を払う」などとしている。

「野放し状態」

 「米軍の低空飛行の即時中止を求める県北連絡会」の岡本幸信事務局次長(46)は、津山、浜田両市でもことし、学校上空を米軍機が飛んだとの報告がある点を挙げ「日米合意が空文化し、野放し状態」と指摘する。

 県は16日に外務、防衛両省などに対し、低空飛行訓練の中止を米側に求めるよう要請したばかり。国際課の前田恭正課長は「日米合意を順守しているとは言い難い。県民生活に関わる重大な問題なので、要請を真摯(しんし)に受け止めてほしい」と話している。

(2011年12月28日朝刊掲載)

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