×

ニュース

核兵器廃絶 イタリア ピサも願う 被爆者の田中さん(広島)に「女性賞」

 原爆投下から70年を機に、イタリアで被爆証言した広島市東区の七宝作家、田中稔子さん(77)が、献身的に活動する女性にイタリア・ピサ市が贈る「連帯のための女性賞」を受賞した。「被爆証言が重要になっていると、あらためて感じた。今後も国内外に向けて核兵器の恐ろしさを伝えたい」と決意を新たにしている。(山本祐司)

 田中さんは11月6~15日、ピサ市とピサ大が開いたイベント「ピサはヒロシマ・ナガサキを忘れない」のメーンゲストとしてイタリアを訪問。ピサなど5都市で計13回講演した。原爆の破壊力だけでなく後障害にも触れ、自身を含む多くの被爆者が核兵器廃絶を願い続けていると強調した。

 現地では、核廃絶を求める声が強く、物理学の研究者も熱心に聞いてくれるなど関心は高かった。平和学も進めているピサ大の大講堂で「核兵器の痛みを抱える被爆者と、核の研究者が協力できたら最高の平和活動ができる」と訴えると、総立ちの拍手を受けた。

 この賞は、1999年にボランティアの女性3人が国連の救援隊として、ピサから紛争直後のコソボに向かう途中、飛行機事故で亡くなったことを機に市が創設。田中さんは、マルコ・フィリッペスキ市長から賞牌(しょうはい)を手渡され、「証言をしてくれてありがとう」と感謝された。

 イタリア招待を仲立ちした、ピサ市在住の翻訳家で平和や環境、人権問題に取り組む斎藤ゆかりさん(56)は「つらい経験を乗り越えて話す田中さんにイタリア国民は勇気をもらった」。田中さんは「多くの被爆者や周囲の人の支えがあったから受賞できた。日本国内でも、核兵器廃絶にもっと関心が高まるよう警鐘を鳴らしたい」と話している。

(2015年12月22日朝刊掲載)

年別アーカイブ