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F35 受け入れ再容認 岩国市長 出火事故で一時留保

 岩国市の米海兵隊岩国基地に来年1月以降、最新鋭ステルス戦闘機F35B計16機を配備する米計画を巡り、福田良彦市長=写真=は20日、出火事故のため留保していた受け入れについて「条件付きで了承する」と表明した。国が実効性のある安心安全対策や地域振興策を示すことを条件に挙げ、「誠意ある対応がなければ見合わせもあり得る」と強調した。21日に山口県の村岡嗣政知事と上京し、国に伝える。

 福田市長はこの日の市議会本会議の冒頭、米国内で10月に発生したF35Bの出火事故を受けて安全性を再検証した経緯を説明。機体の構造上の問題ではないとする米側の判断や国への照会に対する回答、今月19日に同基地のリチャード・ファースト司令官と意見交換した内容などを踏まえ、「機体の安全性に問題はないとする国の見解には一定の理解ができる」と述べた。

 一方で、岩国基地に関係する米軍機事故が相次ぎ、9月にはAV8Bハリアー攻撃機が沖縄半島沖で、今月7日にはFA18ホーネット戦闘攻撃機が高知市沖で墜落。13日には垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが沖縄県沖で大破した。

 出火事故に関して国側が説明した16日の市議会全員協議会では、議員から「配備は時期尚早」などの意見が出ていた。福田市長は米軍機全般の運用に対する市民の不安が高まっている状況を受け、配備容認に条件を加えた。

 具体的な条件の中身としては、従前から国に要望している実情に見合った騒音対策など43項目の安心安全対策と地域振興策、財政支援を挙げ、「国の対応を確かめて最終判断する」とした。(野田華奈子)

F35B配備計画
 米軍が2017年1月と8月、F35B計16機を米海兵隊岩国基地所属のFA18ホーネットなどの機種更新として米国外に初めて配備する計画。国がことし8月、県と岩国市に説明した。市は11月、騒音や安全性などの観点から容認。山口県も容認を表明したが、直後に国から出火事故の連絡を受け、市とともに受け入れの判断を留保した。同月29日、国は「機体の構造上の問題ではない」とする米側の見解を県市に説明した。

【解説】「条件付き」強調 実効性どう担保

 岩国市の米海兵隊岩国基地へのF35B配備計画を国が市に説明して約4カ月。福田良彦市長は国に対し、留保した受け入れの容認に条件を付ける姿勢を示した。その背景には、F35Bの出火事故のほかハリアー、ホーネット、オスプレイと、同基地に関連する米軍機の相次ぐ事故がある。

 事故発生場所は岩国基地周辺ではなかったが、市民は基地と共存するリスクを突き付けられた。国を通じて米側に原因究明を求めても具体的回答を得にくい実情や米側の情報提供のずさんさも露呈した。条件を付したのは、国に以前から要望している安心安全対策と地域振興策を前進させたい市の強い姿勢の表れだ。

 だが、どの程度まで国に実現を求めるかは、福田市長は「対応を聞いてから」と述べるにとどめた。事故が示した課題の解消につながる回答を引き出さなければ本末転倒だ。国の「誠意」だけで担保できる市民の安全などない。

 出火事故を機に、岩国基地との関係性に変化も見える。19日には同基地司令官が福田市長を訪ね、改善策を伝えた。異例の訪問はトップ同士の信頼関係を深め、事故や犯罪を防ぐ意識の共有やローカルルールの構築につながるかもしれない。米海軍厚木基地(神奈川県)からの米空母艦載機部隊移転も控える。地方自治の原点に立ち返り、市民の暮らしを守るために何ができるか。その主体性こそが「基地との共存」の大前提となる。(野田華奈子)

(2016年12月21日朝刊掲載)

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