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在米被爆者の活動報告 歴史学者のサーラーさん 3、4世への継承に難しさ

 歴史学者で、米国ロサンゼルスを中心に活動する被爆者団体「米国広島・長崎原爆被爆者協会」(ASA、更科洵爾会長)のグローリア・モンテブルーノ・サーラー名誉理事=カリフォルニア州=が、東広島市の広島大大学院国際協力研究科で、ASAの活動の現状などについて講演した。

 ASAは、広島県医師会が2年に1回派遣する被爆者健診で、被爆者側の窓口として活動している。健診が始まった1977年以降、日本政府による在外被爆者援護は徐々に整備が進んだが「被爆者の健康を熟知する医師に日本語で相談できる機会は、高齢の被爆者にとって貴重」とした。

 ASAのメンバーが高齢を押して社会活動に関わり、核兵器廃絶への思いを地元の若者に伝えている様子も紹介。「子どもたちは熱心に聞き入り、意義は大きい。同時に、被爆者と子ども世代の日系3世や孫の4世の間では戦争体験の記憶が断絶しがちで、家族間でも体験継承は簡単でない」と指摘した。

 サーラーさんは、米国の人種隔離の歴史研究の一環で太平洋戦争中の日系人強制収容に注目する。それに関連して、日米開戦前に親の古里の日本に渡り、原爆に遭った経験を持つ帰米2世の足取りについて調べているという。成果は著書にまとめる予定だ。

 厚生労働省によると今年3月末現在、米国には被爆者健康手帳を持つ689人がいる。(金崎由美)

(2017年12月25日朝刊掲載)

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