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「回天の母」しのぶ桜 山口県大津島で植樹 市民ら発案・募金

 人間魚雷「回天」の基地があった山口県周南市の大津島で19日、若い兵士に母と慕われた故倉重アサ子さんをしのんで桜が植えられた。出撃前の兵士を包み込んだ「回天の母」を後世に伝えようと、周南市の市民団体が寄付を募り植樹した。

 「お重さん」が愛称の倉重さんは周南市の旅館に勤め、出撃前に食事に訪れる回天の搭乗員に「お母ちゃん」と呼ばれ、慕われた。倉重さんは1985年に78歳で亡くなるまで、自宅に兵士の位牌(いはい)を置いて供養したという。

 倉重さんをしのんで大津島の回天記念館に植えられた桜が枯れたのを周南市の会社役員小野英輔さん(72)が知り、市民団体「回天の母お重さんに感謝する会」を10月に組織。再び植樹しようと市民から寄付を募り、約70万円が集まった。

 この日、回天記念館前に並ぶ戦没者145人の銘板そばで、高さ約6メートルのシダレザクラが植えられた。作業を見守った小野さんは「桜が銘板に降り注ぐように咲くのを願う。兵士を送り出したお重さんの心情と悲しい歴史を伝えたい」と話した。(岩崎秀史)

(2012年12月20日朝刊掲載)

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