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米軍機墜落 不安広がる 訓練空域や移転先自治体

 高知県沖での米軍岩国基地(岩国市)所属2機の墜落事故を受け、関係自治体に不安が広がっている。訓練空域の高知県は相次ぐ事故に再発防止策の徹底を要請。墜落した空中給油機の訓練移転先となる鹿児島県も懸念を示す。米軍が隊員6人の死亡を公表した異例の惨事に各地から原因究明を求める声が高まる。

 「事故は県民や漁業者の不安を増幅させ誠に遺憾」。高知県の尾崎正直知事は事故翌日の7日、米側に速やかな情報提供や再発防止策を求める要請書を防衛省などに提出した。

 高知県沖には「リマ」と呼ばれる米軍演習区域がある。岩国基地への空母艦載機移転で高知を含む四国沖に米軍や自衛隊が必要に応じて使える広大な訓練空域も設定された。高知県周辺では1994年以降、米軍機の墜落が3件あり、尾崎知事は要請書で「リマ区域や周辺で訓練が繰り返されている」と危機感を示す。

 今回の事故では捜索救助活動で米軍の輸送機オスプレイが徳島県の徳島空港に初飛来。飯泉嘉門知事も7日付の国への文書要請で「人命に関わるやむを得ない措置」とした上で「県民に不安を与えないよう安全飛行の徹底を」と求めた。

 墜落した米海兵隊のKC130空中給油機は2014年、沖縄の負担軽減策で米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から計15機が岩国へ移転。海上自衛隊鹿屋基地(鹿児島県鹿屋市)とグアムへ定期的に訓練移転することが決まっている。

 鹿児島県も事故を受け、再発防止や原因究明を国へ要請し「情報提供をするよう強く求めた」と説明。KC130の訓練移転時期は「現時点で国から説明はなく分からない」と話す。

 夜間の空中給油訓練で起きた今回の事故。16年には普天間所属のオスプレイも夜間の空中給油訓練中に沖縄県名護市沖で大破し、当時の翁長雄志(おなが・たけし)知事が米に飛行中止を求めた。沖縄県基地対策課は「岩国移転後もKC130は県内に飛来している。今回の事故の情報を収集し、今後の対応を検討したい」としている。(和多正憲)

正月三が日 飛行自粛を 岩国市、米軍基地に要請

 岩国市は、米軍岩国基地に来年の正月三が日の飛行自粛を要請した。山口県や国、基地とつくる「岩国日米協議会」で「正月三が日は訓練を行わない」と確認しているが、今年は空母艦載機などが離着陸した。

 山中法光・基地政策担当部長が「日本の慣習に配慮し緊急時などやむを得ない場合を除き自粛を」とジョン・ザンブラーノ政務・地域対策室長に申し入れた。

 市は昨年12月にも自粛を要請した。しかし今年1月2、3の両日、艦載機のFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機などが離着陸を繰り返した。市が基地北の川口町に設置する測定器は計18回の騒音を記録した。

 同協議会は盆期間も「飛ばないようにする」と確認。市は例年、飛行自粛を要請するが、今年も川口町では期間中に50回の騒音が測定された。市への苦情は52件に上った。

 同協議会は1991年を最後に開かれず確認事項の一部は形骸化。市は、国や基地と協議会開催や確認事項の文言修正について協議を進めており「できるだけ速やかに結論を出したい」とする。(松本恭治)

(2018年12月13日朝刊掲載)

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