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米博物館が原爆写真集 館長来日 被爆75年の20年出版へ

広島・長崎で何が起きたか若者に示したい

 米国テキサス州にあるテキサス大付属の歴史博物館ブリスコー・センターが、広島、長崎への原爆投下から75年となる2020年の9月に、被爆の惨状を収めた写真集を出版する計画を進めている。米国で写真展も開く予定。ドン・カールトン館長(71)は来日中に取材に応じ、「人間の頭上に原爆が落とされたらどんな事が起きるか、米国の若者に示したい」と語った。

 原爆投下が戦争終結を早めたとの主張が根強い米国で、学術機関が原爆写真の本を出すのは異例。掲載する写真は全て、原爆写真の収集や保存に取り組む市民団体「反核・写真運動」(事務局・埼玉県朝霞市)から提供を受ける。点数やページ数は未定。写真展は20年9月から同センターで開くほか、他都市での開催も目指す。

 同センターは、米国史の研究機関として、記録写真や映像、公文書などを収集保存している。

 準備のため11月に来日したカールトン氏によると、反核・写真運動が15年に出版した「決定版 広島原爆写真集」「決定版 長崎原爆写真集」(ともに勉誠出版)に触発されたという。1945年8月6日の広島と同月9日の長崎への原爆投下後、市民や軍所属のカメラマン、新聞記者たちが撮った計826点を収録。焦土と化した街ややけどした被爆者の姿を捉えている。

 「原爆投下の是非を巡る論争を起こす意図はない。ただ学生や研究者に広島、長崎で何が起きたか示したい」とカールトン氏。「核戦争の壊滅的な結末を米国の若者に知ってもらう上でも意義がある」と話す。反核・写真運動と10月、覚書を交わし、同団体が写真集に載せた画像のデータと説明書きを全て、提供してもらうことになったという。

 日本に滞在中、職員2人とともに広島と長崎の原爆資料館、被爆前の広島を再現する仮想現実(VR)を制作中の福山工業高(福山市)を訪ねた。日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(86)とも懇談した。

 都内で一行と対面した反核・写真運動の小松健一事務局長(65)は「出版への決意を感じた。保守層の強いテキサスで核の悲惨さを知ってもらう試みは、命懸けで被爆地を撮影した人たちの思いにも沿う」と期待している。(田中美千子)

(2018年12月22日朝刊掲載)

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