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未来の平和つくりたい 大林宣彦監督 広島国際映画祭 病身押し参加

「海辺の映画館―キネマの玉手箱」作品解説

 尾道市出身の大林宣彦監督(81)が、11月22~24日に広島市であった広島国際映画祭に特別ゲストとして参加した。がん闘病中の身を押して、最新作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」の上映会をはじめ全7回、作品解説などに登壇。「映画で未来の平和をつくりたい」と熱く語った。(西村文)

 同行した妻でプロデューサーの恭子さん(80)によると、大林監督は入院が必要だったが「広島だから、どうしても行きたい」と望んだという。開幕式の前には、海外ゲストたちと一緒に平和記念公園(中区)の原爆慰霊碑を訪問し、祈りをささげた。

 広島市映像文化ライブラリー(中区)では、近年の「戦争三部作」と称される作品群から「野のなななのか」(2014年)をはじめ、戦争が影を落とす少年の日々を描いた「野ゆき山ゆき海べゆき」(1986年)など自選作4本の上映後、大林監督がトーク。7歳で終戦を迎えた当時を振り返り「子どもであったが故、より純粋に戦争を体験した。愚かな戦争を決して忘れないという思いが、私にこうした映画を作らせた」と語った。

 近年の大林作品に多く出演する俳優の常盤貴子も飛び入りでトークに参加。80年代にブームを巻き起こした「尾道三部作」について、「今、あらためて鑑賞すると作品の根底に戦争があることに気づいた。大林作品を『再発見』するのがマイブーム」と場内を沸かせた。

 最終日、メイン会場のNTTクレドホールで「海辺の映画館」(来春公開予定)の先行上映があった。現代の若者3人が映画の世界に入り込み、過去の戦争を体験する物語。広島で原爆の犠牲になった移動演劇隊「桜隊」が登場する。

 同映画祭から「ヒロシマ平和映画賞」を贈られた大林監督は、「未来の平和をつくる映画の力が認められ誇りに思う」と感謝。満員の客席に向かって「戦争は明日にでも起きるが、平和をつくるには400年はかかる。やり遂げましょうね」と呼び掛けた。

 同映画祭は前身から11回目。大林監督の参加は、同映画祭の代表を務める映画美術監督の部谷京子さんが熱望し、実現した。閉会式で大林監督と並んだ部谷さんは「良い映画は未来を平和にする力がある、という大林監督の言葉を今後、映画祭のテーマとしたい」と宣言した。

(2019年12月9日朝刊掲載)

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