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被爆シャツ 反核伝えて 広島県世羅町教委に寄贈

 広島市で被爆した男性が着ていたシャツが、広島県世羅町の町教委に寄贈された。背中部分は大半が焼けうせ、原爆のむごさを物語る。町教委には被爆の直接的な史料がないため来年の被爆75年に向け、町内での展示や小中生への平和学習で積極活用する考えだ。

 男性は今年4月に101歳で亡くなった恵川正俊さん(竹原市)。軍に所属し、現在の中区白島辺りで建物の修繕作業中に被爆した。シャツの背中部分は大半を焼失。袖口などに血とみられる痕が残る。世羅町出身の妻藤江さん(2013年死去)は「(シャツが)背中に焼け付き、皮膚に食い込んだ」と手記に書き留めている。

 夫妻は戦後、毎年8月6日に子や孫たちにシャツを見せ、体験を語り継いできた。正俊さんは「二度とこのような目に遭わないよう(シャツを)使ってほしい」と願っていたという。正俊さんの死後、長女の溝手薫さん(74)=竹原市=たちが同町に住む、いずれも藤江さんのおい井口清紀さん(79)、林奎介さん(83)を通じて町教委に寄贈した。

 町教委にはこれまで、被爆瓦の他には被爆を伝える直接的な史料はなかった。

 溝手さんは「史料は生々しく、惨状がよく伝わると思う」。井口さんは「世羅の子どもたちが平和の大切さを考えるきっかけになってほしい」と話し、原爆の悲惨さを町民があらためて知る題材になるよう願っている。(神下慶吾)

(2019年12月10日朝刊掲載)

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