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山口「適地」 改めて報告 地上イージス 再調査 防衛省、地元首長に

 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の陸上自衛隊むつみ演習場(萩市、山口県阿武町)への配備計画で、防衛省の山本朋広副大臣は17日、山口県庁で村岡嗣政知事たちに再調査結果を報告した。「安全に配備・運用できる」とし「適地」との見解を改めて示した。(原未緒)

 配備計画を巡っては、むつみ演習場やもう一つの候補地である秋田市の陸自新屋(あらや)演習場を適地とした調査結果で数値ミスなどが相次ぎ発覚。山口では演習場北の高台の標高にずれがあり、国が再調査を進めていた。

 村岡知事や萩市の藤道健二市長、阿武町の花田憲彦町長らと面会した山本副大臣は「むつみ以外に条件を満たす国有地がない」と強調。さらに再調査で高台を測量した結果「仰角10度以下でレーダーを照射でき、地表や構造物に当たらない」などと適地とした理由を説明。「今後、地元の懸念や不安を払拭(ふっしょく)できるよう努める」と理解を求めた。

 これに対し、藤道市長は「再調査結果を市独自で検証する」と発言。花田町長は「配備はまちの生き残りを懸けた定住施策を破壊する。断念を」と訴えた。

 村岡知事が秋田での配備見直しについて問うと、山本副大臣は「再調査中で方針や方向性は決まっていない。ゼロベースで検討している」と述べた。

 また、国はこの日、県と2市町が6月に送った安全対策などへの質問状に対し「迎撃ミサイルの発射経路を制御し、ブースターを演習場内に落下させる」などと回答した。

秋田配備ただす発言相次ぐ

 防衛省が陸上自衛隊むつみ演習場を再び「適地」とした17日の調査結果に対し、地元首長からは見直し論が浮上する東日本の候補地秋田での配備方針をただす発言が相次いだ。日本を二つに分け「国防の盾」で守る前提が揺れる中、山口だけで計画を進めようとする国に警戒感を強める。

 「(秋田で)変更の可能性があるうちはむつみ演習場の配備(の是非)を判断できない」。萩市の藤道健二市長は山口県庁で山本朋広副大臣に宣言した。山口、秋田両県内の配備が「最も適切な組み合わせ」とする国の説明を踏まえた発言だ。

 両県でのずさんな調査ミスが発覚したのは6月。防衛相は謝罪に追われ、再発防止とともに誓ったのが秋田の「ゼロベース」での再調査だった。一方、山口は高台の実測にとどまり、秋田に先行して再調査結果を報告する格好となった。

 ただ、今回の報告資料の大部分は従来説明を整理したものが目立つ。新たな判断要素とする「住宅地からの距離」についても「住宅等からできるだけ離し(おおむね700メートル以上)配置する」と記すにとどまる。100ページを超す資料の結論に変わりはなかった。

 一方、国は「新屋の配備を断念した事実はない」としながらも秋田分の再調査では青森県の陸自弘前演習場を含む代替地の検討を進めている。面会後、山口県の村岡嗣政知事は「別の場所になれば、むつみに配備する意義を国に確認する」と強調。同県阿武町の花田憲彦町長も山口の代替地を「一から全部洗い直していく姿勢が必要だ」と訴えた。

 秋田の再調査は来年3月まで続く。仮に新屋演習場が「不適」となった場合、むつみ演習場への配備はどうなるのか。報道陣からの質問に山本副大臣は「山口には条件を満たす他の国有地がない。秋田のような再検討をする考えはない」と断言した。(和多正憲)

<イージス・アショアを巡る主な動き>

2O18年6月1日 国が山口、秋田両県知事と地元首長に配備候補地と説明
     9月20日 阿武町長が配備計画の反対を表明
    10月29日 むつみ演習場で国の適地調査を開始
  19年5月27、28日 国が山口、秋田両県知事と地元首長に「適地」                とする調査結果を報告
     6月 山口、秋田両県での調査ミスが判明。防衛相が謝罪し再調査         を表明
    12月17日 国が山口県知事と地元首長に改めて「適地」とする再            調査結果を説明

(2019年12月18日朝刊掲載)

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