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抑留体験の講演30回目 廿日市で野村さん 100歳 反戦決意新た

 戦後にシベリアで抑留された島根県吉賀町の野村定男さん(100)が20日、廿日市市の大野西市民センターで戦争体験を語った。2012年に始めた講演で目標の30回目を同市で迎え、市民たち約50人を前に「命ある限り、戦争の悲惨さを伝える」と語り掛けた。

 野村さんは1945年から3年間、シベリアで抑留され過酷な労働を強いられた。氷点下35度以下の極寒の中、水道管の埋設や森林伐採をした。食べ物はパン1枚や、飯ごうのふた半分の小豆のかゆなど、極端に少なかった。「裸のまま凍った死体がトラックで運ばれる光景も見た。地獄のような日々だった」

 次々と仲間は倒れ、自らも激しい凍傷と栄養失調が続いたが、「こんな所で死ねるか」と踏ん張り、48年に帰国を果たした。

 長い間、抑留経験は胸にしまっていたが、12年に地元の中学校から依頼されたのをきっかけに「若い世代に経験を伝えるのが使命」と思い、体験を話し始めた。以来、中国地方の中学高校を中心に年4、5回の講演を重ねている。

 「戦争をなくすには、戦争の歴史を知ることが必要」と、この日も強調した野村さん。使命をかみしめ、目標の先へ歩み続けるつもりだ。(木下順平)

(2020年1月21日朝刊掲載)

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