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国の1棟 独自に判断 中国財務局長 県の検討「見守る」

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)で、広島県議会(64人)の最大会派の自民議連(33人)は28日、県が安全対策の原案として示した2020年度の2棟の解体着手を先送りするよう、県に求めると決めた。中本隆志議長(自民議連、南区)が近く、県側に内容を伝える。

 自民議連が議会運営で連携する第2会派の民主県政会(14人)は「20年度の解体着手は時期尚早」、公明党議員団(6人)は「全棟保存」の立場。湯崎英彦知事の県政運営を支える3会派が、早期の解体に否定的な見解で一致し、県が20年度の解体着手の先送りを決断する環境が整った。

 自民議連はこの日、県議会棟で総会を開き「2棟解体、1棟の外観保存」という原案への考えを集約。県に対して「さまざまな意見が出ている中、引き続き議論を深めてほしい」と促す要望をまとめた。その後、冨永健三会長(佐伯区)が中本議長に、この内容を県へ申し入れるよう伝えた。

 自民議連はこれまで、県の原案について「最も現実的な解決策だ」と評価してきた。冨永会長は「原案への評価は揺るがない。原案を前提に議論をするとともに、喫緊の課題である安全対策にもしっかり取り組んでほしい」と県に求めた。

 県は現在、20年度当初予算の編成で大詰めの作業をしている。被服支廠では、原案を具体化するための関連事業費の計上を探ってきた。今後は3会派の意向を踏まえて、解体に向けた設計費の計上見送りなどを検討するとみられる。

 県は19年12月、原案を公表した。保有する3棟のうち爆心地に最も近い1号棟の外観を保存し、2、3号棟を解体・撤去する内容。ブロック塀が倒れて女児が亡くなった18年6月の大阪府北部地震を受けて、早期の安全確保が必要と説明した。2棟の解体は設計を経て20年度に着手、22年度末に完了すると掲げていた。(村田拓也、樋口浩二)

国の1棟 独自に判断 中国財務局長 県の検討「見守る」

 広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠」(南区)を巡り、4棟のうち1棟を管理する中国財務局の橋本徹局長は28日、県が進める解体や保存の検討を踏まえ、独自の判断を下す考えを示した。記者会見で「県の判断がそのまま財務局の判断では主体性がない。私どもなりの判断をしたい」と述べた。

 橋本局長は、所有する4号棟の保存や解体に関する見解は「決まっていない」と明言した。一方で、建物の老朽化が進み、現状は相当に危険だとの認識を表明。「周辺や通行人に何かあってはいけないという気持ちは、県と同じだ」と、安全対策の重要性を説いた。

 3棟を所有する県は昨年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表した。橋本局長は「まさに今、県で真摯(しんし)な検討、議論が進んでおり、それを見守ることが大事だ」と主張。その上で、「国としてどうするか、県や関係者と相談しながら検討を進め、判断をしていく」と見通した。

 被服支廠の保存・活用について県、広島市、財務局の3者が2016年9月から19年11月まで進めた協議では、財務局は保存に後ろ向きな見解を示していた。橋本局長は「後ろ向きなスタンスではなく、(県など)地元の考えを踏まえて対応してきた」とし、理解を求めた。(樋口浩二)

(2020年1月29日朝刊掲載)

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