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大虐殺の「証人」更新 ホロコースト記念館6月25年

 福山市御幸町のホロコースト記念館が、6月で開館25周年を迎える。ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺の歴史を伝え続け、来館者は延べ約18万人に上る。節目に合わせ、アンネ・フランク家が使用していた食器を新たに展示するなど館内を一部リニューアルした。

 更新したのは、1階の図書コーナーと子ども用スペース、2階のアンネ・フランクを紹介する展示室の3カ所になる。

 図書コーナーには、アンネの父、オットー・フランクさん(故人)の親戚が昨年12月に寄贈した食器類約30点を展示。バラの絵柄が入ったティーポットやケーキ皿、ガラス皿などがある。ポットの模様がかすれた部分もみられ、使い込まれていたことが分かる。

 子ども用スペースには、約60カ国語に翻訳された「アンネの日記」や童話の本を並べる予定。さまざまな国の出身者も楽しめる。

 2階の展示室では、アンネたちの生涯を時代ごとに説明パネルで紹介。アンネの姉に届いたナチスからの呼び出し状、隠れ家で一緒に暮らしたユダヤ人8人のその後も伝えている。平和な時代から迫害を受けた時代の変遷を学べる。

 同館は、聖イエス会御幸教会の牧師、大塚信館長(71)が1971年にイスラエルを訪問した際、オットーさんと出会ったのをきっかけに設立。約60カ国の関係者から寄贈された、強制収容所の収容者服やガス室で殺害された子どもの靴など計約150点を展示する。亡命するユダヤ人を助けた外交官たちを紹介するコーナーもある。

 大塚館長は「25年間、来館して感じた事を周りに伝えてほしいと思い続けてきた。戦争するのも平和を築くのも人間。ホロコーストという史実に触れ、平和の答えを探すきっかけにしてほしい」と話す。(湯浅梨奈)

(2020年4月5日朝刊掲載)

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