×

ニュース

平和へ 信じた映画の力 故郷の尾道 愛し続け 大林宣彦監督死去

 78歳で肺がんが判明してからも、創作意欲は尽きなかった。10日に82歳で死去した尾道市出身の大林宣彦監督。闘病中に撮影し、遺作となった「海辺の映画館―キネマの玉手箱」をはじめ、最期まで平和を追い求めた映画人生だった。

 日本の戦争の歴史をたどる「海辺の―」は、頭がくらくらするほどの極彩色の映像がめくるめく。終盤に登場する大林監督自身の背中が、何かのメッセージを伝えているようにも映る。世代を継いでいけば「400年後にはきっと平和になる」と映画の力を信じて疑わなかった。晩年の黒沢明監督から「映画で世界を平和にする」という夢を託されていたという。

 39歳で劇場用映画を撮り始め、故郷の尾道を原点として新たな映像世界を切り開いてきた。「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」の尾道3部作は斬新な映像に叙情をたたえ、青春映画の名作になった。撮影以外でも頻繁に尾道市を訪れ、交流を続けた。映像を学ぶ学生を指導したり、尾道映画祭に登場したり。作品のみならず、きさくな笑顔で人々を引き付けた。(福田彩乃)

(2020年4月14日朝刊掲載)

年別アーカイブ