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原民喜の遺影登録 被爆作家 「夏の花」つづる 広島祈念館

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)は11日、広島市出身の被爆作家、原民喜(1905~51年)の遺影を登録したと発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による閉館で登録件数は減少傾向だが「被爆75年の節目の年。歩みを絶やしたくない」と協力を呼び掛けている。

 45年1月に千葉から広島に疎開した民喜は、同年8月に幟町(当時)の生家で被爆。生き残った家族とともに旧八幡村へ逃れた。途中の避難所だった広島東照宮(東区)で目撃した被災者の姿などを克明につづった記録は、後の小説「夏の花」につながった。

 祈念館は民喜の遺影の登録を「広島文学資料保全の会」に相談。同会の仲介で民喜のおいの原時彦さん(85)から提供を受けた。民喜の文学を研究・継承する「広島花幻忌の会」の長津功三良事務局長(85)は「戦前は繊細な文体だった民喜が、被爆後は写実的に変わった。そんな作家の人生を多くの人に知ってほしい」と話している。

 祈念館は新型コロナで2月29日から閉館中だが、登録は受け付けている。「コロナ禍で登録件数は落ち込んでいる。一般登録を幅広く求めたい」として、希望者には申込用紙を郵送している。祈念館☎082(543)6271=休館中は平日のみ。(加納亜弥)

(2020年5月12日朝刊掲載)

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