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鎮魂 命の記憶めくる 原爆死没者名簿118冊 風通し

 広島市は20日、中区の平和記念公園で、原爆慰霊碑に納めている原爆死没者名簿に外気を当てて湿気を取る「風通し」をした。新型コロナウイルスの影響で例年と比べて見学者が少ない中、マスク姿の市職員が昨年より2冊増えた名簿118冊のページをめくった。

 市職員19人が原爆投下時刻の午前8時15分に黙とうをした後、作業を始めた。昨年は市内の小中高校生や県外の修学旅行生たち約700人が見守ったが、今年は周知をしていないため見学者はまばら。慰霊碑前に名簿を並べ、傷みがないかどうかを確かめた。

 118冊のうち広島分は116冊ある。昨年と比べて新たに被爆者5068人分の名前が加わり、31万9186人となった。残る2冊のうち1冊は長崎分で、1人増の10人の名前が載る。もう1冊は「氏名不詳者多数」と記される。

 小学生の孫と作業を見守った胎内被爆者の主婦小西ヒサ子さん(74)=西区=は、昨年に亡くした母親の名前が記載された。「8月6日が忘れられないよう、若い人に平和の思いを引き継いでいってもらいたい」と孫の手を握った。

 広島分の最新の1冊と長崎分の1冊を除く116冊は石室に戻された。新たに死亡が確認されたか、昨年8月6日以降に亡くなった被爆者を記帳し、今年の8月6日の平和記念式典で奉納される。(寺本菜摘)

(2020年5月21日朝刊掲載)

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