×

ニュース

地上イージス計画停止 山口配備 安全に課題 迎撃構想 事実上の白紙

 河野太郎防衛相は15日、山口、秋田両県で進めてきた地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止すると発表した。候補地である陸上自衛隊むつみ演習場(萩市、山口県阿武町)では迎撃ミサイルを発射した後、推進補助装置(ブースター)を確実に演習場内に落とせない欠陥が分かり、システム改修や追加出費が必要になったと説明。山口、秋田両県知事に同日、電話で伝えたとし、「両県に赴き、おわびと説明をしたい」と話した。(河野揚、下久保聖司)

 河野氏は防衛省で報道陣に「コストと配備時期に鑑みてプロセスを停止する」と述べ、「当面はイージス艦でミサイル防衛体制を維持する」と語った。安倍晋三首相には12日に報告し、了解を得たという。近く国家安全保障会議(NSC)に報告し、今後のミサイル防衛の在り方を議論するとみられる。  北朝鮮ミサイルに対応するため、米国から購入する大型装備の配備計画が事実上白紙に戻り、安倍政権の責任が問われる。安全保障政策のずさんさも浮き彫りとなった。

 同省は空中で切り離すブースターについて、これまで陸自むつみ演習場に落とせると地元に説明してきた。だがシステムを供給する米国との5月末の協議で、落下場所を制御するにはソフト、ハード両面で改修が必要なことが判明。迎撃ミサイルの開発にはさらに10年以上の歳月と数千億円のコストが必要とみられ、河野氏が「合理的ではない」と判断したという。

 安全性や必要性を巡り世論を二分する地上イージスの配備計画は2017年に閣議決定。日本全域をカバーするため西日本で山口県、東日本で秋田県にそれぞれ1基を25年度以降に配備する予定だった。陸自新屋演習場(秋田市)への配備は地元反発に加え、同省の調査で重大な誤りが発覚し、見直しを迫られた。

 計画関連費用は現時点で総額4504億円。これまでに調査費などとして1787億円を投入している。

イージス・アショア
 イージス艦と同様のレーダーやミサイル発射装置で構成する地上配備型の弾道ミサイル迎撃システム。陸地にあるためイージス艦と比べ常時警戒が容易で、長期の洋上勤務が必要ないため部隊の負担軽減につながるとされる。政府は2017年、2基の導入を閣議決定した。配備候補地として陸上自衛隊新屋演習場(秋田市)、陸自むつみ演習場(萩市、山口県阿武町)を選定した。地元では、レーダーの電磁波による健康被害などに強い懸念が出ていた。

(2020年6月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ