×

ニュース

原爆の子の像 折り鶴減 広島 再利用事業に影響か

 原爆の子の像(広島市中区)に国内外から寄せられる折り鶴が大幅に減っている。新型コロナウイルス禍の中、広島を訪れる修学旅行生や観光客が激減したためだ。広島市は、核兵器廃絶や平和への願いを発信しようと、希望する事業者などに折り鶴を無償配布している。加工して商品化している事業者は、折り鶴の減少に不安を募らせている。(田中美千子、石下奈海)

 2歳で被爆し、10年後に白血病で亡くなった佐々木禎子さんがモデルの原爆の子の像。平和記念公園の一角に立つ像の周囲にある展示ブースは、修学旅行シーズンのこの時期、児童生徒が持参した折り鶴で満杯になるが、現在は半分ほどしか埋まっていない。

 ブースには年間10トン程度の折り鶴がささげられる。市は年に15回、回収しており、直近では5月1日に作業した。市平和推進課は「例年は6月にも回収するが、今のところ見送っている」という。

 市は2012年度以降、希望する事業者や個人に折り鶴を無償で譲っている。一部の事業者などは、名刺や折り紙などに再生して販売している。

 近年、商品化の動きが広がり、新たに寄せられる量が配布ペースに追いつかない状況が続いていた。市が保管している折り鶴の量は19年度末で23・1トンと、事業開始時(97・4トン)の4分の1まで減少していた。

 このため市は本年度、初めて配布制限に踏み切った。前年度に回収した分だけを配ることにしたが、そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。同課は「このままでは来年度、配布量をさらに絞ることになりかねない」と懸念する。

 事業者への影響は大きい。紙器メーカーのトモエ(安佐南区)など市内外の4企業が合同で取り組むプロジェクトには本年度、19年度の2割弱の2・3トンしか割り当てられない。

 プロジェクトは複数の障害者作業所と連携し、折り鶴を折り紙に再生して修学旅行生に有償で提供している。しかし、本年度は原料が少ない上、修学旅行生の激減で需要も見込めず、作業を見合わせている。

 トモエの高丸晃会長(77)は「平和発信の取り組みとして軌道に乗っていただけに残念。作業所に少しでも仕事を回したいが、コロナの収束を祈るしかない」と話す。

広島市に届く折り鶴の活用
 国内外からの折り鶴は主に原爆の子の像(中区)に寄せられる。市は2001年度まで焼却処分していたが、02年度から長期保存を開始。市長交代に伴って方針転換され、12年度から希望する個人・団体に無償で配布している。国内外の平和行事で再展示されるほか、再生紙に加工後、名刺や折り紙、ポストカードなどに商品化されるなど、再利用の動きが広がっている。

(2020年6月16日朝刊掲載)

年別アーカイブ