×

ニュース

ドーム補修 やっと落札 広島市 1年4ヵ月 4回目

 広島市は23日、世界遺産の原爆ドーム(中区)の保存工事を請け負う事業者が4回目の入札で決まったと明らかにした。2019年2月15日に1回目の入札を実施してから1年4カ月を経て、被爆地のシンボルでもあるドームの補修がようやく動き始める。(明知隼二)

 4回目の入札は22日にあり、史跡や重要文化財などの補修実績がある16業者を対象に指名競争入札で実施した。大手ゼネコンの清水建設(東京)だけが応札し、7400万円で落札した。予定価格に対する落札率は99・1%だった。

 今回の保存工事では、鋼材を塗り替えるほか、壁のれんがの継ぎ目や窓部分の柱を補修する。工事の現場事務所を設けるため、ドーム近くの公衆トイレを解体する事業も実施する。8月中旬以降に着工し、来年3月に終わる計画でいる。

 市は今回の保存工事に絡み、19年2月15日、6月17日、11月1日の計3回、入札をしてきた。1、2回目は応札がゼロ。3回目は清水建設の1社だけが札を入れたが、予定価格を超えていたため辞退していた。

 市は3回目の不調の後、専門業者などに聞き取り、必要なコストや工事価格を見直した。市公園整備課は「保存工事の完了が被爆75年に間に合わず残念だが、施工業者が決まり安心している。今後はどうすれば入札不調になりにくいか、専門家の助言を受けながら検討していく」としている。

難工事 コスト見直し決着

 原爆ドームの保存工事を落札した清水建設は、関係者の間で当初から有力な受注先の一つとされてきた。1967年以降、4度にわたってドームの保存工事を手掛けてきた実績があり、原爆で破壊された建物を補修するノウハウを蓄積しているからだ。落札までの1年4カ月を振り返った。

 清水建設は一連の入札のうち、1回目(2019年2月15日)と2回目(6月17日)には参加できなかった。リニア中央新幹線に関わる談合事件で、広島市による指名停止を受けていたためだ。結果として二つの入札では応札がなく、連続して不調に終わった。

 市によると入札では複数の業者が意欲を示したが、最終的には「必要な技術者を用意できない」として辞退したという。市は、当時の建設業界は東京五輪・パラリンピックに向けて全国的に人手不足だった上、ドーム補修の独特な難しさが影響したとみている。

 3回目(11月1日)の入札には清水建設だけが応じた。ただ、応札額は予定価格を上回っており、同社は再度の金額提示をしないまま、11月5日に辞退した。

 市は4回目となる今月22日の入札に向けて、補修の専門業者などへの聞き取りを実施。現場の安全確保や文化財補修の特殊なコストを再検討し、価格設定を見直した。2020年度一般会計当初予算に積んだ事業費は8300万円となり、18年度の5800万円と比べて1・4倍に膨らんだ。

 大幅な増額について、市公園整備課は「専門業者への聞き取りで初めて分かった価格の要因もあった。安全で適正な補修のため、必要な見直しをした結果だ」と理解を求めている。(明知隼二)

<原爆ドームの保存工事の入札の経緯>

入札   開札日         結果
1回目  2019年2月15日 応札なし
2回目        6月17日 応札なし
3回目        11月1日 清水建設だけが応札し、予定価格を超過
           11月5日 清水建設が再度の金額提示をせず辞退
4回目  2020年6月22日 清水建設だけが応札し、落札

(2020年6月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ