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被服支廠の発信 ネットラジオで きょうから広島の有志 歴史・ゆかりの人紹介

 保存か解体かで議論がある広島市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」(南区)を題材にしたラジオ番組のインターネット配信が、30日正午に始まる。市民団体「広島文学資料保全の会」代表の土屋時子さん(72)=中区=たち3人が、被服支廠への関心を広げようと企画した。歴史やゆかりの人たちを紹介する番組を月2回程度、無料で配信する計画でいる。(明知隼二)

 タイトルは「Hihukushoラジオ」。1時間番組として、建物にゆかりのある被爆者や有識者へのインタビューを軸に構成する。峠三吉の「倉庫の記録」をはじめ、被服支廠が登場する文学作品を紹介するコーナーも設ける。動画投稿サイト「ユーチューブ」で、資料写真などを添えて流す。

 番組配信は、土屋さんとシンガー・ソングライター瀬戸麻由さん(29)=呉市、音楽家の河口悠介さん(23)=中区=の3人が3月に発案し、準備を進めてきた。新型コロナウイルスの影響で現地での見学会などが開きにくい中、閲覧者に建物の意義をじっくり考えてもらう手法として、ラジオ番組を採用したという。

 初回は「旧被服支廠の保全を願う懇談会」の代表の被爆者中西巌さん(90)=呉市=が登場する。学徒動員先の被服支廠での日々や、運び込まれた負傷者を救護した被爆時の体験、建物保存への思いなどを聞く。瀬戸さんが聞き手を務める。

 被服支廠を巡っては、3棟を所有する広島県が「2棟解体、1棟の外観保存」を打ち出したが、被爆者の反発などで2020年度の着手の先送りを決定。21年度予算編成に向けて保存や活用の在り方を検討している。土屋さんは「方針が決まってしまう前に、建物の歴史や関わる人たちの思いを知ってほしい」と願っている。

旧陸軍被服支廠(ししょう)
 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。1913年の完成で、爆心地の南東2・7キロにある。4棟がL字形に残り、広島県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。県は築100年を超えた建物の劣化が進み、地震による倒壊などで近くの住宅や通行人に危害を及ぼしかねないとして、昨年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表。本年度に着手する方向だったが、今年2月に先送りを表明した。4号棟については国が、県の検討を踏まえて決めるとしている。

(2020年6月30日朝刊掲載)

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