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被爆死 残った子への手紙 広島の上田さんが冊子に 祖母の「声」伝えたい

 爆心直下の大手町2丁目(現広島市中区)に暮らし、31歳で被爆死した横山幸子さんの手紙や日記を、孫の上田小百合さん(56)=安佐南区=が冊子にまとめた。タイトルは「フレーフレー、ユタカ‼」。手紙は疎開していた10歳の長男豊さんらに宛てたもので、戦時下に生きた家族の絆や原爆が奪った街での暮らしを伝える。

 「いーお成績で御目出度う。偉かったわね」「冬の物なんかどうしておりますか」…。冊子には、西城町(現庄原市)に学童疎開していた豊さんらへの手紙16通が掲載されている。原爆投下直前の1945年3月~7月23日に書かれ、「フレーフレー 歌でも歌って朗らかに過ごしませうね」と、疎開先の生活を励ます言葉がつづられる。

 自宅は爆心地から約130メートルの「わかさや足袋本舗」。近くで建物疎開が進む様子などもつぶさに描かれる。幸子さんは自宅そばの移転先で夫の寿郎さんと義妹と被爆し、犠牲になった。両親を失った豊さんと長女蓉子さん=当時(7)=は戦後、祖父母らに育てられた。

 上田さんは蓉子さんの長女。「家族の体験は過酷で、若い世代に伝えたいけれどどうすればいいか」とこれまで悩んでいた。しかし5年ほど前、豊さん(98年に63歳で死去)が遺した幸子さんの手紙を初めて読んだ。疎開先の息子を勇気づける文面に接し「祖母の『声』を残せば、生きる力を吹き込むような継承ができるかもしれないと思いました」。

 今年2月から冊子にしようと取りかかり、5月に2千部を刷った。A5判124ページ。被爆前に撮影した自宅や旅先の写真、幸子さんの学生時代の日記も掲載している。1500円。希望者はメールアドレスsayu.unima.zaawawayoka@gmail.comへ連絡する。(山下美波)

(2020年7月27日朝刊掲載)

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