ドーム擬人化 平和の祈り/広島市

'99/8/8

 七日夜、広島市中区の平和記念公園で、原爆ドームを「被爆者」 に見立て、音と映像で平和の祈りなどを表現する現代美術の作品が 披露された。

 作品は四十分余りの構成。ドーム前の元安川の岸壁をスクリーン 代わりに、被爆者たちの手が、大型投影機で映し出された。スピー カーからは、五十四年前の被爆体験が流れる。語り口に合わせ、老 いた手は時に震え、時にこぶしを握る。映像と言葉を吹き込まれた 原爆ドームの「証言」を、対岸に集まった約七百人が胸に刻んだ。

 広島市現代美術館が平和に貢献した美術作家に贈る「ヒロシマ 賞」の受賞者で、ポーランド・ワルシャワ出身の現代美術作家クシ ュシトフ・ウディチコさん(56)の受賞記念展(同美術館など主催) の一環。差別や戦争を憎み、世界平和への祈りを作品に込めるウデ ィチコさんは、平和と破壊を象徴するドームを主題に選んだ。

 作品は、十四人が出演して事前に収録。「数え切れないほど、被 爆者の骨を拾った」「この川の水面が見えないほど、人が死んでい たんです」。被爆者をはじめ、被爆二世や中学生も登場し、未来に 平和をつなげる使命を誓った。八日も午後八時から、原爆ドーム対 岸で披露される。

【写真説明】被爆者の手を川岸に映し、原爆ドームを擬人化した現代美術展(7日午後8時15分、広島市中区の広島平和記念公園)


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