核製造被曝者に賠償 米が責任を認める

'00/4/13

 【ワシントン12日共同】十二日付の米紙ワシントン・ポストによ ると、米政府は核兵器製造に従事して被曝(ばく)し、がんなどを発症し たと訴えてきた労働者らへの国家賠償計画を十二日に発表する。

 米歴代政権はこれまで、因果関係が立証されていないなどとして 賠償を拒んできたが、「過去の過ちを正し」(同紙)、数十年にわ たり核兵器製造工場での危険な労働条件を放置した責任を初めて認 めることになる。

 <解説>因果関係を否定できず

 米政府の今回の決定は、半世紀余も続いてきた政府の姿勢を根本 から転換する画期的な措置と言える。

 核関連施設の労働者の間には、以前から白血病や骨髄がんなど放 射線に起因するがんや、その他の疾病が多発していた。もはやその 事実と、放射線による被曝(ばく)、あるいは有毒な化学物質の影 響との因果関係を否定しきれなくなった点が、今回の決定の背景と して考えられる。東西冷戦構造が崩れ、核兵器製造に関して、冷戦 時のような秘密性が幾分和らいだこともあるだろう。

 米政府は昨年七月、核兵器製造と労働疾患に関し、有毒化学物質 であるベリリウムに起因する疾病に対し「因果関係がはっきりして いる」と、補償を認める決定をした。放射線被曝については、その 後もエネルギー省が公聴会を開くなどして、がんに苦しむ労働者や 死亡した労働者の遺族らから証言を聞いてきた。

 今年に入ってからは、小規模ながら「パイロット計画」として、 ケンタッキー州パデューカのウラン濃縮用核施設で働く疾病労働者 への補償措置も決定していた。

 こうした流れの中で、今回は核兵器関連工場で働いてきた全員を 対象に政策決定がなされたわけである。特に画期的なのは、個々の 被曝線量の記録が不十分でも「政府の責任において最大限救済す る」との姿勢である。多くの核兵器関連施設ではこれまで、労働者 の被曝を認めないために意図的にこうした記録を破棄したケースが あり、そのことへの配慮と言える。

 ワシントン・ポスト紙に寄せたゴア副大統領の「補償によって、 病気になった労働者の苦しみは帳消しにできないが、この政権は今 後、その苦痛に対し補償を始める」との言葉は、長年病苦を抱え辛 酸をなめてきた労働者や家族には、幾分なりとも癒(いや)しとな るだろう。(田城 明)



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