「ヒロシマ・アピールズ」を制作した青葉益輝(あおば・ますてる)さん(69)

■記者 岡田浩平

 「PEACE」や「peace」。市民にこんな文字をスタンプで押してもらい、平和を訴えるポスターに仕立てた。幼い孫娘2人も、秋葉忠利広島市長も押したが、どれがどれか分からない。「目立たないけれど、一人一人が努力して支えるのが平和」。太陽とも情熱の塊とも思わせる大きな「丸」を、誇らしげに見つめる。

 社会派のグラフィックデザイナーとして知られる。道の水たまりへ、たばこの吸い殻が捨てられた写真。「灰皿ではありません」とコピーを付けた東京都のポスターは代表作である。大手企業の宣伝も手がけてきた。

 平和を訴える独自のポスター作品も30年来、手がけてきた。両手の影絵をハトに見立てた「君の手に平和がいる」、2つの銃の先端を曲げてハート形に結んだ「THE END」…。「小学生でも分かる、きれいなデザインを心掛けている。全世界で受け入れられ、伝わらないと意味がない」

 広島とは縁がある。おじ一家が住み、子どものころから何度も訪れた。ギャラリーを営んでいたおばから「広島で平和ポスターの個展を」とよく言われた。原爆資料館(中区)に日に3度足を運んだこともある。「ヒロシマ・アピールズ」ポスターを担うに当たり、「ヒロシマの心を世界に伝える上で失敗は許されない。自分のデザインに襟を正して向き合った」。

 デザイナーの視点から物事をみて感性を研ぎ澄ます日常。それがプロとして当然の生きざまだ。求められた仕事以上に、いい仕事をする上乗せ分が「趣味」だと笑う。東京都渋谷区で妻と暮らす。

(2008年8月2日朝刊掲載)


 

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