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跡地利用計画
「折り鶴」論議、混迷深まる

2009.6.3

市長 …メルマガで持論力説
議会 …長期保存に疑問の声

 旧広島市民球場(中区)の跡地利用計画で折り鶴展示施設(折り鶴ホール)の是非が焦点となる中、秋葉忠利市長がメールマガジンで折り鶴へのこだわりを力説している。一方、市長の政治姿勢に批判的な議員は「必要性が分からない」とさらに批判を強め、混迷の度は深まるばかりだ。

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旧広島市民球場の跡地利用計画 広島市が策定。約5・5ヘクタールのうち8割は緑地や広場を整備。球場スタンドの一部を残す。広島商工会議所ビルの移転新築も盛り込む。折り鶴ホールはNPO法人が運営。整備費は約1億6000万円を見込み、世界中から寄せられる折り鶴1年分(約10トン)を展示する。将来は劇場や文化施設を設ける構想も。市議会は3月の定例会で計画関連予算案を一部削除、推進に待ったをかけた。

 毎月10、25日に配信するメルマガ市長エッセー。「折鶴の消える日」と題した文章が3回連続で載った。折り鶴に反対する人たちの声が大きく「このままではやがて折鶴が一羽も届かなくなる」との懸念から始まる。

 原爆の子の像の前にうずたかく積まれた折り鶴の多さや美しさに圧倒された30年前の体験を紹介。ポーランドのアウシュビッツ博物館に残る犠牲者の無数の靴と重ね合わせ、世界中から届く折り鶴の保存の意義、物理的な量が訴える「メッセージの力」を説いた。

 「暴論としか思えない」。折り鶴の保存に批判的な議会の主張にこう反論した。メルマガは約2700人が登録。市のホームページでもバックナンバーが読める。「折鶴の消える日」は今後も続くという。市長は先月26日の記者会見でも「毎年1000万羽贈られる意味を多くの人に理解してほしい」と訴えた。

 一方、議員の一部は折り鶴ホールの設置にとどまらず、普段の長期保存や展示自体にも批判の矛先を向ける。

 5月25日の市議会都市・経済活性化特別対策委員会では自民党系の議員から「折り鶴」への批判が噴き出した。ある議員は「神様への供え物も(最後は)廃棄する。折り鶴の保存は広島人の生活習慣に反する」と持論を展開。別の議員は、5月から市職員の名札のデザインが折り鶴に変更されたことに「なぜそこまでこだわるのか」と語気を強めた。

 「いつから平和のシンボルがハトから折り鶴に変わったのか」との意見も出た。質疑中に市職員を「おまえ」と呼び、反感をあらわにする議員もいた。「平和の象徴」をめぐる論争は感情的な対立の様相も帯びてきた。(滝川裕樹)