旧広島市民球場(中区)の跡地利用計画で、広島市議会は16日、市の具体化検討費の一部を減額した。事実上ストップしていた計画が一歩を踏み出すことを容認する一方で、同時に「ブレーキ」もかけるという判断の背景をみる。
秋葉忠利市長に批判的な会派を中心に出された修正案。具体化検討費を全額ではなく、一部減額にとどめたのは、経済界への配慮があるとみられる。
広島商工会議所は、2013年に誘致を目指す全国菓子大博覧会を、跡地に整備される広場で開催する計画を持つ。市に対しては早期整備を求めている。市は今後、修正案が認めた費用で跡地利用計画のイメージ図をつくり、公開する。
一方、修正案を出した会派は、計画に盛り込まれた折り鶴展示施設(折り鶴ホール)に批判的だ。平和記念公園と隣接しており「必要性に乏しい」「集客力が不足している」との意見である。
さらに、活性化を期待する地元商店街にも異論が残る。「議会の修正は理解できる。イメージ図も複数つくり、比較検討できるようにしてほしい」(市中央部商店街振興組合連合会の望月利昭代表理事)との声である。
市が提案した具体化検討費1930万円のうち、修正案で削ったのは概算工事費を算出する費用237万円と、周辺地域の回遊性向上を検討する費用540万円。
この日の本会議では修正案に反対する議員が「いくら費用がかかるか分からないのでは、市民に説明がつかない」「回遊性向上の検討費を削ってどうやってにぎわいをつくるのか」と批判した。
修正案の可決後、商議所の大田哲哉会頭は「誘致を目指す全国菓子大博覧会が計画通り開催されるよう事業を推進してほしい」とのコメントを発表した。
ただ、修正案をまとめた議員の一人は「市のペースで計画を進めないよう修正するのが重要だった」と本音を話す。背景に「秋葉市政」そのものへの批判がにじむ。市の跡地利用計画が実現するかどうかは依然、不透明だ。(滝川裕樹、東海右佐衛門直柄)
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