広島市議会(定数55)の予算特別委員会が25日、可決した予算修正案では、五輪招致検討費のほかに二つの経費も削除した。さらに旧広島市民球場(中区)の廃止条例案を否決する一方、球場解体費は認めるという「ねじれ」を生じさせた。
修正案で削除したのは、国内外から寄せられた折り鶴を長期保存・展示する折り鶴ミュージアム(仮称)検討費約90万円と、秋葉忠利市長のロシアや南米への出張費約1500万円。
これとは別に予特委は、旧市民球場の跡地利用計画に連動して市が提出した球場の廃止条例案を反対多数で否決した。その一方、球場の解体経費や回遊性向上など具体化検討費用は認めた。市は3月末で球場を閉鎖し、早ければ夏にも解体する方針でいる。(滝川裕樹)
▽妥協が生んだ「ねじれ」 市民ら当惑
球場解体予算は通すが、廃止条例案は待った―。25日、広島市議会予算特別委員会が示した判断は、多数派工作の駆け引きがもたらした「妥協の産物」といえる。球場解体をめぐって賛否双方の関係者からも当惑の声が上がった。
解体費以外に議会が認めたのは、回遊性向上の検討費や概算工事費の算出費、完成予想図の作成費など約1億8300万円となる。議会が市の跡地計画を認めた形になる。
その一方、夏にも解体を予定する球場の廃止条例案は否決した。修正案に反対の議員からは「明らかに矛盾。意味が分からない」との批判が出ている。
これに対し、修正案を提出した会派のベテラン議員は「矛盾するのは確かだが、過半数を得るには条例の否決しか妥協点がなかった」と認める。市の跡地利用計画に反対する議員は「解体予算を通しても廃止条例が施行されなければ、予算は執行できないはず」と、その狙いを明かす。
この複雑な採決結果に対し、球場解体反対のパレードを企画した喫茶店経営の中川公一郎さん(50)は「まずは一歩前進だが、議会でのねじれ現象を理解できる市民は少ないのでは」と首をひねる。
市中央部商店街振興組合連合会の望月利昭理事長は「球場をなぜ、このままにするのか」と当惑。「商店街の客足は落ち込んでいる。市は次の定例会までに市民の意見をよく聞き、跡地利用策をまとめ解体に着手すべきだ」と求めた。(野田華奈子、教蓮孝匡)
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