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賛否交錯、見えぬ行方 跡地利用で近くイメージ図公開
広島市、合意形成目指す

2010.5.29

 広島市の旧市民球場(中区)跡地利用計画のイメージ図が近く完成する。市は、市民や関係者に公開して合意形成を図る構えだが、緑地広場を中心にした利用計画に対する賛否は地元商店街でも交錯しており、先行きには不透明感も漂う。

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 市は3月の市議会定例会で球場廃止条例案が否決されたため、7月末まで球場を開放している。ただ、「集客効果」となると、活況を呈するマツダスタジアム(南区)と対照的な状況だ。市中央部商店街振興組合連合会の望月利昭理事長は「アマチュア野球では限界がある。球場が解体できずに跡地の整備が遅れれば客足がさらに落ち込む」と懸念する。

 ▽集客効果に自信

 同連合会は昨年2月、周辺のホテルや百貨店と計画の見直しを求める陳情書を市議会に提出した経緯もあるが、望月理事長は「にぎわい創出になるなら市の計画に反対ではない」との姿勢を示す。

 4月末には、市や経済界、旅行業界などの専門家でつくる「賑(にぎ)わいづくり研究会」が提案書をまとめた。世界芸術祭や音楽祭、サーカス、ビアガーデン…。緑地広場を中心に催す多彩なイベント案を盛り込んだ。座長を務めた金井宏一郎広島商工会議所前副会頭は「実現すれば新名所になる」と自信をみせる。

 跡地の東側一角に事務所ビルの移転を計画する商議所の大田哲哉会頭も研究会の提案書を評価し「市民や市議会の理解を得て早期に計画を進めてほしい」とコメントする。

 ▽解体反対を訴え

 ただ、商店街にも市の計画に批判的な声はある。本通り商店街の永井紙店の永井健二社長は「球場に愛着を持ち、活用したい人は多い。解体はじっくり市民の意見を聞いてからでも遅くない」と強調。30日には解体に反対する団体や市民でアピール行事を開く。

 スポーツ施設の整備を求める市民団体「オールフォーヒロシマ」の槙坪大介代表は「これまでの議論の進め方は不透明。イメージ図に対する市民の声を聞く場を早急に設けて」と注文する。

 市議会の反応は複雑だ。3月の定例会では球場廃止条例案を否決しながら、解体費を計上した予算案は可決する「矛盾」ともいえる判断をした。

 市は「解体費が認められた以上、廃止条例は必要」として、計画に対する市民の合意形成とは切り離し、6月10日開会の定例会に再提案する方針を固めた。先の定例会では反対に回り、6月も可否の鍵を握るとみられる公明党の平木典道幹事長は「賛否は議案提出後に検討する」と述べるにとどめている。(野田華奈子)


旧広島市民球場の跡地利用計画 市が2009年1月に策定。約5.5ヘクタールのうち8割を緑地広場にする。折り鶴をモチーフにしたイベント施設「折り鶴ホール」(仮称)は当初の構想を修正し、折り鶴の展示はしない。飲食施設も設けるほか、将来は劇場や文化施設の建設も想定。球場の外野スタンドの一部を残す。当面の事業費は約33億6千万円。広場は12年度完成が目標。13年の広島開催が決まった全国菓子大博覧会の会場にも予定されている。