戦後復興のシンボルであり、広島東洋カープの本拠地だった旧広島市民球場(中区)が9月1日に閉鎖される。市は、緑地広場を中心とする跡地整備の2013年春完成を目指す。都心の空間をどう地域活性化に結び付けるのか。跡地利用計画の中身と整備日程を点検し、課題を探った。(野田華奈子)
◆緑地広場
跡地利用計画は、中央公園内の旧球場一帯約5・5ヘクタールが対象。うち約4・5ヘクタールを緑地広場にする。球場はライトスタンドの一部を保存し、休憩所に生まれ変わらせる。緑地広場と隣接の広島バスセンターとを結ぶ歩行者橋も建設する。球場解体費を含む市整備分の概算事業費は約34億1千万円を見込む。
◆民活導入
緑地広場を囲むように民間施設を配する。室内イベントの会場となる「折り鶴ホール(仮称)」が集客の一端を担う。議会の批判が強い折り鶴の保存展示は断念した。建設費は全額寄付を充て、池原義郎・建築設計事務所(東京)を中心としたNPO法人が運営する。飲食物販施設「森のパビリオン」は、NTT都市開発(東京)が整備する。
市が将来的な課題と位置付けているのが、劇場の建設だ。「にぎわい施設」を求める広島商工会議所と地元商店街の意向を受け、計画に盛り込んだ。ただ、整備主体や事業費の検討はこれからの段階である。
また、跡地一帯の南西にある商議所ビルは東側に移転新築される。市が移転先の国有地を買い取り、商議所に転売。現在の敷地は、市が買い取り、桜を植えたサブエントランス広場に一新する。
◆整備日程
市は、10月ごろに「さよならイベント」を球場で催し、ベンチや観客席などの公開オークションを企画する。球場の解体工事は年内に着手し、11年度中に終える。
その後、各施設の整備が始まり、13年春までに緑地広場▽森のパビリオン▽商議所ビル▽歩行者橋―が完成する。建設費の寄付集めが必要となる「折り鶴ホール」は、13年春よりは遅れる見通し。
緑地広場を中心にした一帯では、こけら落としとして13年4月19日から5月12日まで、全国菓子大博覧会が開かれる。
◆にぎわいづくり
市が掲げる年間150万人の集客を実現するには、一帯に人の流れを恒常的につくれるかどうかが鍵を握る。 市が設置した有識者による「賑(にぎ)わいづくり研究会」(座長・金井宏一郎広島商工会議所前副会頭)は4月、大道芸フェスティバルや神楽競演大会などを提案。緑地広場で定期的にイベントを開く重要性を説いた。
跡地は国有地のため現時点では、コンサートなど営利目的のイベントは開けない。このため、市はそれを可能にする条例制定の検討を始めた。イベントを誘致する官民の組織づくりを進める構えだ。
117万都市のど真ん中に生まれる4・5ヘクタールの緑地広場を、新しい広島のシンボルとしてどう育てていくのか。市民の知恵を結集するリーダーシップが市に求められている。
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