カープを応援する人たちをたたえる「中国新聞・カープALL―IN大賞」(中国新聞社、広島東洋カープ主催)。今年の年間大賞と特別賞の表彰式が、広島市民球場(中区)で二十三日開かれるカープファン感謝デーである。ファンや地域と選手・球団とのきずなを強め、今回でひとまず役目を終える。大賞と特別賞に輝いたグループの活動とともに、この二年間の取り組みや歴代の受賞者の思い、カープへの期待などを紹介する。(金井淳一郎)
▽練習場 地域振興の核
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表彰式を前に、これまでの活動を笑顔で語り合う友田会長(右から3人目)ら協力会のメンバー
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「地道な活動の成果が評価され、うれしい」。カープの二軍練習場を拠点に地域を「カープタウン」に育て、一軍を目指す若手選手に声援を送り続ける広島東洋カープ由宇協力会。年間大賞の受賞は、十四年に及ぶ活動の集大成でもある。
合併で岩国市となった、旧由宇町に練習場が完成したのは一九九三年三月。両翼百メートルの球場では毎年、三十―四十試合のウエスタンリーグ公式戦が繰り広げられる。住民らは、これといった特徴のなかった町にとって、練習場を地域おこしの起爆剤ととらえた。
完成に合わせて発足した協力会は、その中心的な役割を担う。
ウエスタンリーグ開幕戦のセレモニーや野球教室、サイン会を開き、カープのユニホームを模した野球チームもつくった。友田洋会長(64)は「カープを通じて町民が一つになり、知名度が格段に上がった」と喜ぶ。
カープがつなぐ縁は町外にも広がっている。今年二月、宮崎県日南市でのキャンプを激励に訪れた際、庄原市の応援グループと意気投合し、互いの地域イベントに特産品を送り販売するなどの交流も始まった。
会員は現在、約百人。町と岩国市との昨年三月の合併や、今回の大賞受賞を弾みに、メンバーの意気込みは高まる。「会員をさらに募り、応援と地域づくりの輪を広げたい」と友田会長。二十三日の表彰式では、「若ゴイ」が目標とする市民球場の「晴れ舞台」に立つのを楽しみにしている。
▽姉妹デュオ 歌でエール
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ユニホーム姿でライブハウスに出演し、応援歌を歌う「秀樹」(土居さん=左)と「吾一」(江畑さん)
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オリジナル曲でエールを送る活動が認められ、「秀樹と吾一」として特別賞を受けるのが、広島市安佐北区の江畑美保さん(42)と安芸高田市の土居佳代子さん(39)。「男に生まれていたら両親がこう名づけていたはず」という姉妹デュオだ。
二人は、共に学生時代からバンド活動を続け、十年前からデュオを組む。大好きなカープを応援しようと二年前、「うちらも市民球場に連れてって」を作詞・作曲した。
地域のイベントなどで歌い続けて評判を呼び、八月に市民球場であった阪神戦前に招かれ、ブラウン監督への応援歌などもファンの前で披露した。レパートリーは、選手名をタイトルに取った「それは梵(そよぎ)」も加わり十五曲。ライブハウスなどでも歌っている。二〇〇九年に完成する新球場で、「ぜひ歌いたい」と姉妹デュオの夢は大きく膨らんでいる。
【4月】選手と市民つなぎたい
広島県内の大学生や専門学校生らでつくる応援サークル「エントランス」の藤田奈穂子代表(22) 球団やファンから若者代表として期待されているんだと思う。イベントを企画するなど、選手と市民をつなぐ役割を果たす存在になっていきたい。
【5月】願いが実現 観戦にも熱
カープ応援歌でリハビリする津丸内科デイサービスセンター(広島市安芸区)の介護福祉士木下達巳さん(33) 表彰されたことで、お年寄りの「球場に行こう」という願いが実現した。テレビでのカープ観戦にも熱が入っている。次は「新球場に行こう」が目標だ。
【6月】間近で見た選手に感動
カープと同じデザインのユニホームで活動する柳井カープスポーツ少年団(柳井市)の蛯原亜門主将(12) 表彰式で初めて市民球場のグラウンドに立った。新井選手を間近に見ることもできうれしかった。いつか本物のカープのユニホームを着たい。
【7月】試合誘致し交流を促進
二軍公式戦を開催するどんぐりクラブ屋台村(北広島町)の竹丸学理事長(57) 受賞は今後の活動の励み、自信になった。地域でクラブの存在価値を高めていく上で、カープの存在は大きい。これからも試合を誘致して球団、選手との交流を深めたい。
【8月】球場基金に賞金を寄付
キャッチフレーズをチーム名にした広島弁護士会野球部「広島ALLINS」の為末和政監督(54) 賞金は市の新球場整備基金に寄付した。今年のチーム戦績はカープと同じく今ひとつだったが、来年は一緒に快進撃できるように頑張る。
【9月】練習試合の申し込みも
カープのチームカラーから名付けた女子軟式野球チーム「広島レッズ」(広島市)の井上美由紀主将(27) 競技人口が少ない女子野球に光が当たった。受賞後は練習試合の申し込みもあり、活動の幅も広がった。身近にプロ球団があることに感謝したい。
枠超え連携広がる
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「レッド・ストーム・デー」と銘打ち、赤い服装で声援するファン(9月8日)
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カープを軸にした町おこし、赤ヘルナインの勇姿を自らにだぶらせながら白球を追う子どもや大人、応援を通じての交流―。「ALL―IN大賞」に手を挙げた人、グループの活動には、「われらがカープ」という共通の考え、ファンと選手・球団が一体だとの思いが貫かれている。
選考委員長を務めた多田公熙・広島県体育協会名誉会長(84)は「あんな活動、こんな人がいるのかという驚きと喜びの連続だった」と、四人の委員と二年間、計十四回を数えた選考会を振り返り、全体を講評した。
各回の受賞を励みに、グループの枠を超えた連携が広がっている。昨年から今年にかけ月間、年間の各大賞を受賞した四団体が「レッド・ストーム・デー」と名づけた応援会を企画し、九月上旬、約百五十人が赤い服装で市民球場のスタンドから声援を送った。参加したメンバーらは「来年はもっと大勢で埋めたい」と誓った。
カープは残念ながら今シーズン五位と低迷。エースと主砲の相次ぐフリーエージェント(FA)宣言で、来季の戦いはさらに厳しくなる。
多田委員長は「個々のグループがさらに一緒になって選手・球団を支えてほしい。ナインは熱い期待に応えるプレーを見せてほしい」と奮起を願っている。
(2007.11.23)