The Chugoku Shimbun ONLINE
たゆまず歩む 地域とともに 中国新聞
トップページへ
記事検索
さよなら市民球場
思い出のあの試合
中国新聞トップ > みんなのカープ > さよなら市民球場 思い出のあの試合

1986年10月18日、日本シリーズ広島―西武第1戦
山本浩二、現役最後の一発

  10 11 12 13 14  
西武  
広島  
延長14回、時間切れ引き分け(観衆26、037人)
(西)東尾、渡辺、松沼雅―伊東
(広)北別府、清川、川端、津田―達川
▽本塁打 小早川1号、山本浩1号

 プロ18年 集大成の同点弾

Photo
同点弾を放った山本選手(左から2人目)を出迎える赤ヘルナイン

 「ミスター赤ヘル」の名で愛され、黄金時代の一翼を担った山本浩二さん。自らが「プロ18年間の集大成」と呼ぶ一打は、西武との日本シリーズ第一戦で放った現役最後の一発。舞台は、満員の市民球場だった。

 0―2で迎えた九回一死。小早川毅彦選手の本塁打で1点差となった瞬間から、ドラマチックな物語は始まる。東尾修投手の元へ向かう森祇晶監督。山本選手はじっとその光景を見つめていた。「渡辺(久信)が出てくると厄介。代わるな、と祈っていた」

 東尾続投が決まり、山本選手は一つの決断をする。「外のスライダーだけ待つ」。それまでの打席はスライダーで打ち取られていた。「必ず同じ球で勝負してくる」。土壇場で、18年間で培った「よみ」を信じた。

 一球目。真ん中のスライダーを見送った。失投だったが、外角にストライクゾーンを合わせていた山本選手には、真ん中は内角。手が出なかった。「あの一球で、バッテリーはシュート狙いと勘違いしたのではないか」

 二球目は内角のシュート。ボール球で探りを入れてきた。「予想通り」。確信は深まった。風は右から左。「右翼へ打つなら逆風。相当踏み込まなければ、打球は伸びない」。一発がほしい場面。完全に頭からシュートを捨てた。三球目。外のスライダー。自然と体が反応した。

 「入るとは思わなかったが」。放物線を描いた打球は、思いのほか伸びた。起死回生の同点弾に場内は騒然。「ひざは開き気味だったが、しっかり踏み込めていたのだろう」。万感の思いでダイヤモンドを駆け抜けた。

 一振りで決めた集中力。スライダーを狙ったよみ。シュートの恐怖心を捨て切った勇気。この勝負には、ミスター赤ヘルのすべてがあった。「引退を決めていたが、戦う『気持ち』があった。だから打てたと思う」。それは、市民球場への惜別の一振りでもあった。(小西晶)

「さよなら市民球場」は今回で終わります。

(2008.12.28)

そのほかの連載記事はこちらから


クイックリンク → | 社説 | 天風録 | 地域ニュース | カープ情報 | サンフレ情報 | スポーツ情報 | 全国・世界のニュース |
本ページに関する問い合わせ、ご意見などはこちらまで 中国新聞社/中国新聞情報文化センター マルチメディア本部
本ページ内に掲載の記事・写真などの一切の無断転載を禁じます。すべての著作権は中国新聞社に帰属します。
| 個人情報 |
(C)Copyright 1996-2005 Chugoku Shimbun.No reproduction or republication without written permission.
The Chugoku Shimbun 7-1 Dohashicho Nakaku Hiroshima Japan