中国新聞社

(29)腹帯騒ぎ持参品の事前説明丁寧に

2001/11/18

 熱が少し下がって、うれしい。リンパ嚢腫(のうしゅ)のせいだったのだ。わき腹に管を入れ、先に付けた袋に液をためる。袋をぶらぶらさせて歩くと、おなかの皮が引っ張られて痛い。でも、熱が出て消耗するよりはいい。

 毎朝、排液の量をチェックしに看護婦さんが来る。「いくら出てる?」と聞いては、私もメモをつける。管を入れた外科の先生が「すぐには、熱は下がらんですから」と見に来てくれた。熱も三七度台なので、ずいぶん楽だ。他の人には感染しないと分かり、また大部屋に戻った。

 一週間ほどで排液は少なくなり、全くない時もあった。「もう、帰れるかな。ゴールデンウイークまでに、なんとかメドがつけば、家でゆっくりできるのになあ」

 しかし、あては外れ、連休も病院だった。全国各地の話題や行楽の光景をテレビで眺めながら、「ひとごとだな」と割り切ってみるが、なんとなく切ない。退院を心待ちにする日々が過ぎていく。四つのベッドはガラ空き、一人で四人部屋を独占した日もあった。

 「だれか入ればいいのに」。人恋しさを募らせていたら、新しい患者さんが次々に入ってきた。同じ日に手術する三人に囲まれた。心配なのだろう。「準備するものはこれでいいのか」と、看護婦さんに聞いている。

 「腹帯は新しいものより、一回洗ったものがなじみがいい」との説明で、新品の腹帯を洗濯機で洗い、まとめて乾燥機で仕上げることにしたらしい。

 「ど、どうしょう」。持ち帰った腹帯をベッドの上で広げて、慌てている。三つの腹帯が団子のように絡み合い、しかも、しわだらけになっている。私も手伝ってしわ伸ばしをするのだが、乾燥しているのでお手上げだ。そのうちに、おかしくなって、キャッキャッと笑い出した。

 「なんでー。みんなベテラン主婦なのにー」

 「洗濯物入れるネットがないんだもの」

 「三ついっぺんに入れずに、一つずつにすればよかったのかな」

 「入院前に、一回洗ったものを持参するよう説明があれば、こんなことにならずに済んだのに」

 いろいろ言った揚げ句、アイロンを掛けることになった。しかし、病院にアイロンはない。出番とばかり、世話焼きの私は、外から調達した。

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