「なんのカギ?」   その2 おうちに入れない

 ちゃんとポケットに入(い)れたはずなのに、カギはどこかへいってしまったのです。 イラスト

 どうしよう、とえりなは思(おも)いました。これでは家(いえ)に入(はい)れません。きっとどこかで落(お)としてしまったにちがいありません。どこで落としたんだろう。いくら考(かんが)えても、えりなにはわかりませんでした。

 えりなは、いまかえってきたばかりの道(みち)をまたもどりはじめました。雪(ゆき)はさっきよりもつよくふっています。どこかにカギは落ちていないか、雪の中をえりなは地面(じめん)を見ながら歩(ある)いていきました。

 くだもの屋(や)さんの角(かど)をまがっても、カギは落ちていません。パン屋さんの店先(みせさき)にもカギは落ちていません。えりなは立ちどまって横断歩道(おうだんほどう)を見ました。雪ははげしくふっています。道のむこうも見えないほどです。えりなは雪をよけて、パン屋さんの軒下(のきした)に入りました。雪はつもりはじめています。おとなりの家の前(まえ)にも……、あれっとえりなは思いました。おとなりはクリーニング屋さんのはずなのに、まっ白い家がたっています。

 こんな家、あったっけ。あらためて家を見ると、家の前の雪の上に、なにかが落ちていました。ひろってみると、カギでした。

 でも、ざんねんながら、えりなのカギではありません。えりなのカギには青いリボンがついていましたが、ひろったカギにはピンクのリボンがついています。

 この家のだれかが、このカギを落としたのかもしれない、とえりなは思いました。

 えりなは白い家のドアをノックしました。

 すると、「はあい」と、すぐに中から返事(へんじ)があって、ドアがひらきました。

 目の前に立っていたのはクマでした。白いセーターに、白いズボンをはいています。「なんのご用?」と、クマはたずねました。

 「おたくの家の前にこのカギが落ちていたの。あなたのカギ?」

 えりなはカギをクマに見せました。

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