「なんのカギ?」   その4 アップルパイを焼こう

 クマは白い戸棚(とだな)のカギ穴(あな)にカギをさしこもうとしました。でも、戸棚のカギではありませんでした。 イラスト1

 クマは戸棚をあけると、中からノートを取(と)りだしました。

 「ここには北極菓子(ほっきょくがし)の作(つく)り方(かた)がいっぱい書(か)いてあるんだよ。そうだ、北極パイを焼(や)こう。きみはなんのパイがすき? 北極チェリーパイ? それとも北極アップルパイ? どんなパイの焼き方だって書いてあるよ」

 「わたしはアップルパイがすきよ。それからわたしのなまえは、えりな」と、えりなはいいました。

 「わかったよ、えりなちゃん」

 そういうと、クマはつーいとすべって台所(だいどころ)にいきました。えりなもつーいとすべって台所にいきました。

 冷蔵庫(れいぞうこ)も流(なが)しもやっぱりまっ白です。 イラスト2

 クマはてきぱきとはたらきました。パイ生地(きじ)をなん度(ど)ものばし、それをじょうずにお皿(さら)にはりつけました。えりなもりんごの皮(かわ)をむくお手伝(てつだ)いをしました。

 パイをオーブンに入(い)れると、「さ、これでよし」とクマはいいました。

 「ところで、カギのことなんだけど、なんのカギ?」と、えりなはいいました。

 「もしかするとピアノのカギかもしれないな。でも、ためしてみなくちゃわからない」

 クマはそういうと、へやのすみの白いピアノの前(まえ)にすわりました。でも、ピアノのカギではありませんでした。

 クマはふたをあけると、ポロロンとピアノをひきました。それから歌(うた)をうたいました。

 「白いものなら、なんでもすきさ
   白い道(みち)、白い花、白い波(なみ)
    白いものなら、なんでもすきさ
      白い家、白い雪(ゆき)、白い氷(こおり)

 えりなはぱちぱち手をたたきました。

 それから「ねえ、ところで、このカギ、なんのカギ?」と、いいました。

まえのページ ひょうしのページ つづきのページ