出来秋を実感できるナシのもぎとり体験。新鮮な果物を求める客で、通りはいつもにぎやかだ（福島市大笹生）

　果物の甘い香りに誘われて、大勢の観光客が押し寄せる「道」がある。

　福島市郊外の観光道路「フルーツライン」。初夏のサクランボに始まり、モモ、ナシ、ブドウ、 冬のリンゴまで、旬の果物のもぎとり体験や直売で提供する観光果樹園が三十軒以上並ぶ。三十年 ほど前、細い砂利道から始まったフルーツラインは、果物王国・福島を象徴する名所に成長した。

　「安全、安心が一番の売りです。子どもたちが口にするんだから」

　老舗の果樹園を営む服部栄さん（５２）は胸を張る。有機肥料で土を作り、農薬は、実が熟す一 カ月前から使わない。食の安全を考えれば、手間は惜しまない。

　残雪が輝く峰々を背に、色とりどりの果樹が花を咲かせる春。フルーツラインは桃源郷の趣になる。