特 集 
2000.1.1

世界に広がる核汚染
 暴走する原子炉、繰り返される臨界事故…。第二次大戦中の原爆開発が引き金となって飛躍的に進展した核エネルギー利用は、地球上に多くの核被害を引き起こしてきた。核による汚染は、被曝(ばく)者を生み出し、子孫の代まで環境を破壊する。これまでに起きた主な核汚染を、原子力発電所の事故など四類型に分け、地図に示した(戦略爆撃機や原子力潜水艦の事故は除く)。掲載した二十五カ国・地域、五十四カ所は代表的なものに過ぎないが、それでも核被害が広範囲に拡散していることが分かる。

世界に広がる核汚染世界に広がる核汚染
世界に広がる核汚染世界に広がる核汚染

 【注】地図に記載した事例は、原子力施設の事故の深刻さをレベル表示する国際原子力事象尺度(INES)での評価が始まった1992年以降、レベル3以上(日本はレベル1以上)の核事故。国際原子力機関(IAEA)と経済協力開発機構の原子力機関(OECD/NEA)が評価している。それ以外は(1)さかのぼってレベルが適用された事故(2)レベルが適用されていない主要な事故(3)評価の対象ではないが、放射性物質による汚染と核実験被害の重大なケース。説明文の角内数字の次は、発生年月日=年はいずれも1900年代▽事故概要▽被害状況―の順。
原子力発電所で運転中の事故
核燃料施設で作業中の事故
ウランや放射性廃棄物による汚染
核実験

1
セラフィールド(イギリス)
57年10月10日、再処理施設で作業ミスにより原子炉の炉心温度が上昇し、火災とともに放射性物質が所外へ放出。所内の14人が全身被ばく。周辺200平方キロの牛乳の出荷を禁止(レベル5)◆73年9月26日、作業中の34人が被ばく(レベル4)◆92年9月8日、配管腐食で施設内に放射性物質が放出(レベル3)
2
サンローラン(フランス)
80年3月13日、燃料カートリッジの交換中、異物混入で原子炉が停止。炉心が部分損傷し、放射性物質が所内に放出(レベル4)
3
バンデロス(スペイン)
89年10月19日▽タービンの故障で火災。冷却設備など安全系機器が損傷
4
レガン(アルジェリア)
60年2月〜66年▽フランスが17回の核実験
5
トレビソ(イタリア)
97年9月29日▽ガンマ線透過撮影施設で放射線源が露出▽1人被ばく
6
ロッシング鉱山(ナミビア)
76年3月〜▽国連のウラン輸出禁止布告を無視してウラン鉱山で採掘▽周辺で健康被害の報告
7
ビンチャ(ユーゴスラビア)
58年10月15日▽研究所内の実験用原子炉が暴走▽6人被ばく、1人死亡
8
イスタンブール(トルコ)
99年1月8日▽スクラップ業者が解体したコバルト60線源が露出▽5人被ばく
9
コラ
93年2月2日▽竜巻によって送電線が損傷し、原子炉出力が減少。一次冷却系の冷却速度が不備
10
スモレンスク
91年7月22日▽主安全弁の試験中、非常用炉心冷却設備が利用不能に
▼レベル7深刻な事故)放射性物質の大規模放出。広範囲にわたる健康影響および環境影響(11)チェルノブイリ原発

▼レベル6大事故)かなりの量の放射性物質放出(13)キシュチム再処理施設

▼レベル5所外へのリスクを伴う事故)放射性物質の限定放出。炉心や放射線防護壁の重大な損傷()セラフィールド再処理施設(50)スリーマイル島原発

▼レベル4所外への大リスクを伴わない事故)一般人の法定限度と同等の被ばくに相当する放射性物質の小規模放出。作業員の致死量被ばく()セラフィールド再処理施設()サンローラン発電所(35)東海村・JCO東海事業所(53)ブエノスアイレス研究炉

▼レベル3重大な異常事象)微量の放射性物質放出。重大な所内汚染()セラフィールド再処理施設()バンデロス原発()トレビソ透過撮影施設()イスタンブール()コラ原発(10)スモレンスク原発(11)チェルノブイリ原発(20)ナローラ原発(26)陜西放射線施設(28)天津電線工場(30)吉化化学工場(35)東海村・動燃東海再処理工場(37)ビリビノ原発(52)ヤナンゴ水力発電所

▼レベル2異常事象)かなりの所内汚染、あるいは従業員の過大被ばくレベル評価の開始以降、国内では(33)美浜原発(35)東海村・動燃東海再処理工場、海外は111ケース

▼レベル1逸脱)認可された運転領域を超えた異常レベル評価の開始以降、国内では(34)敦賀・高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(34)敦賀原発(36)女川原発、海外は156ケース
11
チェルノブイリ(ウクライナ)
86年4月26日、試験運転中に暴走状態となり爆発。周囲に多量の放射性物質をまき散らした。半径30キロの13万人以上の住民が避難。直後に31人が死亡、200人以上が急性放射線障害。これまでの推定死者数は数万人とも言われる(レベル7)◆95年11月27日、建物内が高濃度の放射性物質で汚染(レベル3)
12
ノバヤゼムリャ島
不詳▽旧ソ連が大気圏、地下、水中で130回を超える核実験▽アザラシ数千頭死亡などの情報
13
キシュチム(ロシア)
57年9月29日、軍事核施設で放射性廃棄物の冷却装置が故障し、爆発。所外に放射性物質が放出。南北300キロ、東西8〜9キロの地域が汚染され、1万人以上が避難した。旧ソ連は32年間、事実を公表しなかった(レベル6)◆53年から68年にかけて臨界事故が7回発生し、5人が死亡
14
テチャ川
49年〜56年▽キシュチム核工場からの高レベル放射性廃棄物を直接廃棄▽約7000世帯を強制移住。白血病やがんの報告
15
トムスク
61年8月14日▽再処理工場で高濃度のウラン溶液が蓄積されて臨界▽1人被ばく◆63年1月30日▽再処理工場で臨界▽4人被ばく◆78年12月13日▽再処理工場で臨界▽8人被ばく◆93年4月6日▽核燃料廃液タンクが爆発▽ウランなど含む廃液が周辺約1000ヘクタールを汚染
16
セミパラチンスク
49年8月29日〜89年10月19日▽旧ソ連が470回前後の核実験▽周辺住民にがんなどの被害相次ぐ
17
チャガイ(パキスタン)
98年5月28、30日▽2回の地下核実験
18
ポカラン
74年5月18日▽地下核実験1回◆98年5月11〜13日▽3回の地下核実験
19
タラプール
69年〜▽原発と核燃料再処理施設の廃水を放出▽近海の海藻から高濃度の放射性物質検出との報道
20
ナローラ
93年3月31日▽火災で停電。タービンやケーブルなどが損傷
21
アラパット
不詳▽モナザイト鉱石の採取で、放射性物質を含む砂が周辺海岸に広く散布
22
カルパカム
83年〜▽原発開設後、近隣の海洋汚染など
23
ジャズグダ
不詳▽ウラン鉱山の放射性物質が近隣を汚染
24
ロプノル
64年10月16日〜▽中国が41回の核実験
25
イポー(マレーシア)
82年ごろ〜▽三菱化成(現三菱化学)が出資する合弁化学工場が放射性廃棄物を畑や川に投棄▽近隣で放射線被害とみられる患者発生
26
陜西省
92年12月▽放射線施設からコバルト60線源の一部紛失▽拾った3人が被ばく死
27
モンテベロ島
52年10月3日〜▽英国が数回の核実験
28
天津
95年11月21日▽電線工場の2人が電子線(アルファ・ベータ線)で被ばく
29
台北(台湾)
82年ごろ▽101棟、1155戸のビルが多量の放射性物質で汚染▽甲状腺(せん)異常や流産も
30
吉化
96年1月5日▽化学工場のガンマ線透過撮影装置からイリジウム線源が紛失▽拾った男性1人が被ばくし右足と左腕を切断
31
エミュー、マラリンガ
50年代〜▽英国が核実験▽先住民アボリジニの被害者多数
32
日本海
66年〜93年▽原子力潜水艦の解体・廃棄に伴い、液体・固体放射性廃棄物を海洋投棄
33
美浜
91年2月9日▽原発の蒸気発生器伝熱管の破損により原子炉停止。微量の放射性物質が放出
34
敦賀
95年12月8日▽高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の冷却系設備からナトリウム0・7トンが漏れ、原子炉を手動停止◆99年7月12日▽原発の原子炉冷却水が漏れ、原子炉が手動停止。接続配管部分に長さ約8センチの亀裂
35
東海村(日本・茨城県)
99年9月30日、JCO東海事業所でウラン溶液を沈殿槽に入れる作業中に臨界事故。科技庁発表では、臨海による直接被ばく69人でうち1人死亡、臨海終息作業での被ばく81人(レベル4)◆97年3月11日、動力炉・核燃料開発事業団(現・核燃料サイクル開発機構)の再処理工場で火災と爆発。放射性物質が施設内に飛散し、37人が被ばく(レベル3)◆93年12月27日、動燃再処理工場でフィルターの交換中にプルトニウム粒子を作業員が吸い込み、内部被ばく(レベル2)
36
女川
94年12月11日▽原発の核計装系検査の手順ミスから原子炉が自動停止
37
ビリビノ
91年7月10日▽原発内で使用済み燃料を輸送中、放射性物質が露出▽敷地内の輸送通路と処分場までの道路を汚染
38
マーシャル諸島
46年7月1日〜58年▽ビキニ環礁、エニウェトク環礁で米国が数十回の核実験▽54年3月1日、第五福竜丸(23人乗り組み)が被災。1人死亡。周辺の島々で汚染が進み、住民は強制移住。放射線被害の報告多数告
39
クリスマス島、モールデン島(キリバス)
57年5月15日〜▽英国が30回以上の核実験▽島民や英国兵らに健康被害
40
ポリネシア(仏領)
66年7月2日〜95年9月▽フランスがムルロア環礁とファンガタウファ環礁で200回近い核実験▽タヒチなど周辺で住民の放射能被害
41
サンフランシスコ
40年代〜70年代▽全米各地で人体実験のため、医師らが18人にプルトニウム溶液を注射。49人の知的障害児に放射性物質入りのミルク、82人に放射線の過大照射▽がんなどによる死亡が相次ぐ
42
ハンフォード
44年から13年間▽プルトニウム製造工場で53万キュリーの放射性物質が拡散。59年、地下の貯蔵タンクから地下に放射性物質漏れ▽近郊住民に甲状腺障害など
43
リッチランド
62年4月7日▽プルトニウム回収工場で溶媒抽出作業中に臨界▽3人被ばく
44
ネバダ
51年1月27日〜▽935回の核実験▽風下住民や兵士に健康被害
45
アイダホフォールズ
59年10月16日▽再処理工場でウランの回収工程で臨界▽12人被ばく◆61年1月3日▽原子炉実験所で原子炉が爆発▽3人死亡◆61年1月25日▽再処理工場の作業ミスで臨界▽251人被ばく◆78年10月17日▽再処理工場で臨界
46
チャーチロック
40年代後半〜▽ウラン鉱山の穴から放射性物質が飛散▽住民被害の報告
47
ロスアラモス
58年12月30日▽プルトニウム回収工場で臨界事故▽1人死亡
48
オークリッジ
58年6月16日▽ウラン回収工場で硝酸ウラニル溶液が漏れて臨界▽8人被ばく◆99年12月8日▽化学爆発で放射能が施設内に放出▽10人被ばく
49
サバンナリバー
不詳▽燃料再処理施設で高・低レベル放射性廃棄物の土壌汚染
50
スリーマイル島(アメリカ)
79年3月28日、給水ポンプの故障で冷却系統が利かず、炉心部が溶融。空だき状態で圧力容器に亀裂が入り、大惨事寸前に。圧力容器を包む格納容器が壁となり、大量の放射性物質放出という最悪事態は免れた。周辺8キロの妊婦と幼児が一時避難(レベル5)
51
ウッドリバー
64年7月24日▽ウラン回収工場で作業ミスから臨界▽1人死亡
52
ヤナンゴ(ペルー)
99年2月20日▽水力発電所建設現場で作業員がイリジウムを持ち歩く▽家族ら5人被ばく
53
ブエノスアイレス(アルゼンチン)
83年9月23日、軽水型研究炉で炉心配置の変更中、作業ミスで原子炉が暴走。作業員1人が被ばく死(レベル4)
54
ゴイアニア(ブラジル)
87年9月13日、病院跡地から医療用放射線源のセシウム137が持ち出され、廃品回収業者が買い取った後、「光る青い粉」と珍しがられて多くの人が触れる。4人死亡、245人が被ばく


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