中国新聞
第5回世界平和連帯都市市長会議
広島・長崎 2001.8.4〜2001.8.9

「人道の世紀」へ行動誓う
―アピール採択し閉幕―

「ヒロシマ・ナガサキアピール」を採択し、討議を終えた平和市長会議

 地球規模の都市ネットワークで核兵器廃絶を目指す第五回世界平 和連帯都市市長会議は九日、総括の全体会議と閉会式を長崎市で開 き、二十一世紀を「人道の世紀」とするよう努力することを盛り込 んだ「ヒロシマ・ナガサキアピール」を採択。広島市で四日から始 まった議論を終えた。

 閉会式では、市長会議会長の秋葉忠利広島市長がアピールを読み 上げた。「人類が自らの存在を脅かす核兵器を創(つく)り出し た」二十世紀の反省に立ち、「二十一世紀を『人道の世紀』とする ために努めることを確認した」と指摘。

 「人道の世紀」を「すべての命が大切にされ、和解と協調、理性 と良心によって創り出される平和の世紀」と定義。実現に向け各国 政府や国連などに、核兵器禁止条約の早期締結への努力▽京都議定 書の早期批准を含め環境問題への国際社会全体の取り組み促進―な ど六項目を強く求めた。

 各都市の重点行動として、核兵器廃絶に向け非政府組織(NG O)などとの連携▽インターネットを活用した情報交換など多面的 協力▽平和教育の推進と被爆体験の意味の学問的体系化の三つを挙 げ、市民とともに行動することを誓っている。

 二十一世紀初めての会議には、海外二十七カ国の六十一都市と二 団体、国内四十四自治体から計二百人が参加した。

【解説】活動活発化へ道筋 若者との連携など課題

 被爆地広島、長崎市で論議を重ね九日、全日程を終えた第五回世 界平和連帯都市市長会議は今回、組織や活動の在り方で質的転換を 目指していた。成果と課題をまとめた。

 転換の最大のポイントは、都市ネットワークの強化だった。背景 には、現状への反省がある。今回も見られたように、何度も発言す る都市がある一方、ほとんど発言しない都市も少なくなかった。秋 葉忠利広島市長も「熱心なのは少数」と認めざるを得ないのが現実 だ。

 来年で発足二十年になる市長会議は、加盟都市が五百を超すなど 量の拡大は順調。しかし内実は、四年に一度の会議が中心の「オリ ンピック型の組織だった」(秋葉市長)。今回の分科会でも「市長 会議は潜在力を十分発揮していない」との指摘があった。

 だから、日常行動型への転換や各都市の活動活発化は不可欠だっ た。「広島・長崎講座」など具体策を盛り込んだ総合的な行動計画 を採択し、第一歩は刻んだ。問題は今後、どう実行していくかだ。 先導役を担う広島市の責任は重い。

 今回の会議では、非政府組織(NGO)を含む市民との連携強化 が共通認識になった。市民の意識と行動が伴わないと、世界を動か すうねりは生じない。

 とりわけ、被爆者の高齢化・減少が進む中、若者による被爆体験 の継承が重要だ。長崎での開会式には、中、高生三百五十人が参 加、国連への平和署名を行っている高校生の代表が活動や思いを報 告した。こうした若者との連携に力を入れてきた長崎市に比べ、広 島市は一歩遅れている。

 広島市は、今回の会議で若者を含む市民との接点拡大を図った が、日常的な若者との連携に一層力を尽くすべきだろう。都市連携 を促すインターネット整備や被爆資料のデータベース化なども急が れる。世界に対しても市民向けにも、多くの課題が突き付けられ た。

(宮崎智三)

(01/08/10)


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