中国新聞
第5回世界平和連帯都市市長会議
広島・長崎 2001.8.4〜2001.8.9

平和市長会議 10市の代表に聞く

 第五回世界平和連帯都市市長会議に参加した市長たちは、会議で 得た成果を今後にどう生かそうとしているのか。中国新聞社は十日 までに、参加都市のうち、核保有国の米国、ロシア、英国、フラン スと、核実験をしたインド、核保有疑惑があるイスラエルのほか、 オセアニア、アフリカ地域四カ国の計十都市の市長たちに会議の成 果や核兵器廃絶への課題を聞いた。

 セバストプル市(米国)ラリー・ロビンソン市長(54)

 世論高め 政府動かす  わが国は大量の核兵器を保有しているうえ、ブッシュ政権になっ て軍縮の動きが弱まった。大変危険で恥ずべきことだ。政府は、利 益のみを追求する企業に押し切られている。平和に対する市民の意 識を高めて世論で企業に対抗し、政府を動かす必要がある。会議で は同じ思いの地域がたくさんあると実感した。帰国したら市民団体 と経験を共有し、核問題をはじめ環境破壊や子どもへの暴力など、 平和を妨げる諸問題の改善に努めたい。

 ボルゴグラード市(ロシア)ユーリ・ストレルニコフ副市長(49)

 核削減 保有国同時に  初めて参加したが、大変有意義だった。出席者が非常に多いのに も驚いた。多くの地域と人が、広島で起きたことを真剣に考えてい るのだろう。ロシアは核兵器を持っているが、持ち続けたいとは思 っていない。大切な税金は、市民の生活水準向上のために使う方が 良い。核兵器は減らさないといけないが、保有国が同時に減らさな いと実現できない。しかし最近の米国は逆に増やそうとしているよ うだ。ロシアは減らそうとしてるのに。

 マンチェスター市(英国)ジョン・スミス市長(69)

 平和への一歩を実感  平和を望む世界中の人と有意義な話し合いができた。一粒の種が 巨木になるように会議を重ね、核の脅威を全世界に伝えていくこと が、核兵器廃絶という大きな成果を生むと信じている。この会議 は、まさに成長過程にある。理事国として英国内での平和活動も進 めて行かねばならない。まずは会議の内容をレポートにし、私が肌 で触れたことを全市民に知ってもらいたい。また非核都市を増や し、核保有国の政府に廃絶を訴えていく。

 アラドン市(フランス)アンドレ・ギャール市長(62)

 被爆の惨状 ショック  原爆について知識はあったが、実際に原爆資料館を見学して、広 島で起きた惨状の大きさに驚いた。まさに、百聞は一見にしかず だ。市町村の長は、住民の近くにいることを忘れてはならない。住 民に平和の貴重さを伝える必要がある。すべての自治体が行動すれ ば、平和な世界に近づける。まだ世界には多くの核兵器がある。核 保有という政府の決定を覆せるのは、世論しかない。廃絶へ、一人 ひとりの力を集めなくてはならない。

 ビシャーカパトナム市(インド)ラジャナ・ラマニ市長(46)

 草の根活動 拡大を  熱心に話し合いに臨む参加者の姿に、だれもが真に核廃絶を望ん でいるのだと勇気づけられた。しかし、国家を動かすには、草の根 レベルの活動をもっと広げねばならない。力強い市民の叫びを政府 に訴えれば、国を動かせる。この会議も、もっとオープンにしたら 良い。被爆の実相は、インドの学校でも教えられるが、本で読むの と実際に見るのとでは随分違う。原爆資料館を見学して、広島の人 たちの痛みが伝わってくるようだった。

 アシュケロン市(イスラエル)ベニー・バクニン市長(50)

 紛争解決へ手尽くす  欧州では第二次世界大戦で六百万人ものユダヤ人が殺された。同 じ悲劇を体験しているだけに、広島市民に共感するところが大き い。原爆資料館や平和記念式典でも痛みがひしひしと伝わってき た。残念ながら、わが国の紛争はまだ未解決で、愚かしい戦争が続 いている。帰国したら、パレスチナとの平和条約に一刻も早くサイ ンするよう政府を説得することにあらゆる手を尽くしたい。非核を 宣言できるようにも働きかけたい。

 ネーピア市(ニュージーランド)ハリー・ローソン市議(59)

 原爆展開催働きかけ  私たちの国は十六年前に米国の圧力を乗り越えて非核国になっ た。当時は反対だったオーストラリアも今は非核を宣言している。 新しいことを始めるのは楽でないが、初めの一歩がなければ世界は 動かない。初参加の会議では、有意義な話し合いができ、世界平和 実現への出発点になった。原爆資料館では、原爆のすさまじさを知 った。世界中の人が資料を見て実情を知るべきだ。ほんの一部で も、わが国で展示できるよう働きかけたい。

 カンパラ市(ウガンダ)カブエ・タクバ副市長(40)

 武器よりも子の未来  原爆資料館で、核兵器の恐ろしさを目の当たりにし、戦争の愚か さを実感した。発展途上国は、巨額な国家予算を武器購入に費やし ている。私たちの国も残念ながら同じだ。その資金を、将来を担う 子どもたちの生活環境の改善や教育に使わねばならない。将来を担 う子どもたちには、歴史を正しく学んでほしい。図書館に平和や戦 争をテーマにした本を増やすなど案を練りたい。広島での経験は、 帰って会見を開き、全市民に伝えたい。

 ロメ市(トーゴ)テイ・リマジエ副市長(50)

 参加国の情熱に感銘  初参加だが、核兵器のない世界の実現に情熱をぶつける各国の参 加者の姿に強い印象を受けた。戦争のない世界にするには、人種差 別など引き金になる要因をしっかり考えなくてはならない。欠けて いるものを埋めるため人は奪い合い、戦争の火種をつくる。今回の 会議のように、対話や協力の重要性を世界に発信していく必要があ る。広島に来て原爆の恐ろしさを痛感した。どの国にも起こっては ならない。国に帰って子どもたちに伝えたい。

 バンギ市(中央アフリカ)セシール・ゲール市長(48)

 対話の必要性を痛感  大量殺りくの核兵器をはじめ、武器ではなく、対話による問題解 決の必要性をあらためて痛感した会議だった。特に原爆資料館で は、原爆の被害がいかにすさまじかったか、広島が平和を世界に訴 え続ける意味や重要さがよく分かった。私の国では、学校で原爆に ついて習うが、被害の実態を知っている人は少ない。帰国したら、 テレビやラジオ、新聞を通して、住民に伝えることから始めたい。 今回心に強く刻んだ平和への決意を他の市長たちにも訴えたい。

(01/08/11)


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