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医師団派遣めど立たず 在外被爆者健診事業 '02/9/11

 国が七月から始めた在外被爆者支援策のうち、南米や北米、韓国 へ日本から医師団を派遣する健康診断事業が、実施のめどが立って いない。支援策全体に反発する現地の被爆者団体から協力が得られ ないためで、事業主体である広島県や広島市は、関係機関との調整 を急いでいる。

 健診は、北米へは一九七七年から広島県医師会と放射線影響研究 所(広島市南区)が県と市の補助金を得て実施。南米へは県が県医 師会に委託する形で八五年から始めた。それぞれ隔年で実施し、こ の枠組みが続いていれば今年は秋に南米に向かうはずだった。

 しかし、国が、本年度から始めた在外被爆者支援策のメニューに 健診団の派遣を加えたため、事業の枠組みが一変。広島と長崎の両 県市は、北米と南米に韓国も加え、本年度中に健診団を送り込むこ とになった。

 ところが南米では、在ブラジル原爆被爆者協会が「治療を伴わな い健診ではなく、ブラジルで医療を受けられるよう基金にしてほし い」と要望。健診会場の確保や被爆者への周知など、医師団派遣に 必要な現地の協力を得る見通しが立っていない。このため、最も被 爆者が多いブラジルを外し、アルゼンチンやパラグアイなどを回る 案も一部にある。

 北米も、米国広島・長崎原爆被爆者協会(据石和会長)は健診継 続を望むが、もう一方の米国原爆被爆者協会(友沢光男会長)はブ ラジルと同様の理由で反発している。

 さらに、韓国原爆被害者協会も、日本政府の支援策への賛否を留 保。韓国での健診事業は初めてでもあり、現地との調整を担う長崎 県は「まだ具体的な詰めをする段階に至っていない」と話す。

 広島県被爆者・毒ガス障害者対策室の片山克則室長は「健診は現 地の協力体制があってこそ。粘り強く協力を求めていきたい」と話 している。


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